2023

10. ジェイムス・ブレイク/Playing Robots Into Heaven

ライブだったら断トツで一位。今年のソニマニで見た彼の演奏と歌が人生のベストアクト。電子音楽への愛の渦が会場全体を包み込んでた。深夜、机のライトは一つだけで、ヘッドホンをつけ、ラップトップを広げてる、そんな景色が見えてくる。そしてそこには無垢さみたいな成分を多く含んでて、その独特な孤独性がライブ全体を支配してた。最終的には心を支配された感じすらあったなあ。やべえなと思わず涙ながらに叫んでた記憶ある。PCミュージックに原点回帰した本作、今の開放的な雰囲気にマッチしてて、深夜に聞くとほんとすごいところまで連れてってくれる。このアルバムのモードで言うとソニマニよりもボイラールームのDJの方が近いかも。これも最高なのでぜひ。

https://www.youtube.com/watch?v=SaA7B4eRgy8

09. Eddie Chacon/Sundown

割と最近出会ったけど、良すぎて急上昇中。ソウル/R&BはもっぱらCloeSolのMotherをずっとかけてて、数年TOPに君臨してたんだけど、TOPが変わりそうな予感。
リズムのかっこよさはもちろん、抑えめのロマン・ドリーミーな雰囲気に、タイトなリズムがかっこいい。心地良いインディシンセの音色(よれたビンテージなシンセも味わい深い..)もいい味を出してる。ベッドルームな質感だけど、音は一級。病みつきになるかっこよさ。90年代にネオソウル・デュオ: チャールズ & エディとして活動してたこともあって見事。そっちの方も掘ってみたくなる。人生もう一周できるなら、こんな大人にもなってみたいなあ

08. Mom/悲しい出来事-THE OVERKILL-

〜発光する表情/ああこんな気分の時に死にたいな/でもこういうとき人は大抵死なない/こういうとき人は大抵生き延びちまう
今抱えてるやるせない思いが永遠になったなって感じでもう打ちひしがれる他なかったよね。ちぇ、牙を剥き出しにできない自分が際立っちゃうじゃねえかよ…と長めの昼休みの海沿いの散歩にて。

07. Romy / MidAir

TheXXファン待望、ROMYの新作。みんな大好きFredAgain...プロデュースのファーストアルバム。そりゃ好きに決まってるじゃないですか...ROMYのクリーンなリバーブに浸された時の得体の知れぬ美しさに触れてるのが嬉しいのか、それにタイトなビートミュージックが乗ってくるから美しいのか、いずれにしても俺の大好きな要素全盛。M10のEnjoy Your Life、伸びやかで透明すぎる歌声がmy mother says to me〜で諭すような感じで始まる歌詞とハマりすぎる。来日チケット買った!

06. スガシカオ / イノセント

コンスタントに新作出してくれて嬉しいです。ダークなFunkとインモラルな歌詞とスガシカオのあの声で起こる化学反応が大好きで、Sweet、Familyあたりコロナ禍以降聴きまくってるから、前作のJORKERとか今作で言うとバニラあたりが立ち位置的にくるんだろうけど、今作はその匂いより、スガシカオのイノセントな曲の豊富さに目を奪われた。特に「さよならサンセット」がやばい。まさしく近年のイノセント・スガシカオ堂々の一位。だってさ、死んだ友達に送る曲の冒頭の歌詞が、「夕焼けの川伝いにユニフォームの影たちが走る。そんな景色を君もみていたのかな」だぜ?やばくない?まあ後半の歌詞で涙腺崩壊するのですが... 歌詞の冒頭で、全てが見える。

05. キャロライン・ポラチェック / Desire, I want to turn into you

遠くから聞こえる雄叫びのような肉感的に震わせる歌声と囁く声の両側面を持ったすげえボーカリスト出てきたなあ!って感じで去年から注目してたんですが、アルバムも最高。オルタナエレクトロのアルバム一曲目の正解出された感じ。インディエレクトロをベースの世界観は保たれつつ、ベッドルームになりきらない景色の広さを持った曲が多い。宇多田とかもそうだけどベッドルームから始まってるのに世界は宇宙まで繋がってる感じ?(本人はベッドルームポップって言ってるけど)は真似できない。宇多田やポラチェックは宇宙と体で交信してるとしか思えない。ラストの一曲、Billionは確実に俺の頭の中で永遠に向かう船が飛びたったよね。

04. cero / e o

やりたいこと全部ceroがやってくれた。ヒップホップ、R&B、現代音楽、クラシック、、長年それぞれのメンバーが蓄積していった要素がcero的なメロディーに集約していく。
アンゲルス・ノーブスを聴きながら1人でみた鎌倉の花火はあまりにも印象的。「今ここにあるかすかな救済者/瓦礫はうずたかく」。とその時のぼくの心にじんわりと染み込んできた。あのぽっと心を静かに照らしてくれたあの感覚は忘れたくない。いや忘れられない。

03. トロイシヴァン / Someting To Give Each Other

俺の中でのヒーロー、トロイシヴァン。待ってたぜ。と言う感じの打ち出し方で最高だよね。こういうアイコンがいてくれるだけで世界は救われる。
Rushサビだけ、3ヶ月前ぐらいからTikTokで解禁されてて、その時からもう夢中。ジャングルなビートもわりに遅めでディスコっぽくも聞こえる中毒性のリズム、今聞きたかったアゲアゲのコード、そしてあのサビのラッシュよ。Troyeのリバーブに浸された it’s so goodが官能的で美しい。GotMeStartedもそうだけど、ミームになった音楽を組みこんだり、OneOfYourGirlsのレトロセレブな雰囲気に振り切ったMvだったり、2023の俺の中のエンタメは彼が全部持ってた。

02. RyanBeatty / Calico

前作とはうってかわってカントリーやブルースな雰囲気によったニューアルバム。メロディー、ハモリのラインの取り方、全てが好きだ。美しすぎる作品をありがとう。初めてレコードで聴いた時はその響きの美しさに驚いた。(デジタルでずっと聴いてた分、アナログで聴いた時その生音の豊かな響きの違いに結構驚いた)
ヒップホップの特殊なメロディーとカントリーやアメリカンポップの美しい部分が最高にブレンドされていてジャンルとしては彼のメロディーとしかいえない。この作品の中でも好きな曲はBruises Off The Peach。桃のようなあざ。彼の作る世界が美しく繊細で傷つきやすく、愛らしい、のは聴いててもちろんわかっていたつもりだけど、言葉ひとつひとつを見ていくともっと繊細だった。まさに熟れやすい桃のよう。そんな熟れた部分をBruises Off The Peachと言うタイトルで人間関係と照らし合わせて歌ってる。熟れてあざになった部分をきっても桃は甘い、人間関係や恋愛関係でもいえるかもねなんて彼が囁くように歌うんだ。

01. 坂本龍一 / 12

僕は変わっていくアーティストが好きだと思う。もちろん変わらない人間なんてそうそういないし、そもそも人間は変わっていく生き物なんだけど。どっちかというと自分が飽き性でいろんなことをやってみたいという人だからかもしれない。だから常に新しいことをやってる人を好きになるわけです。惚れ相だし、飽きっぽい、それが自分のいいところかもなんて思ったりするこの頃。そんな中、この間ムーンライダーズの鈴木さんの言葉に救われた。(他の音楽家のエピソード出して恐縮ですが)
鈴木: 「この音楽は面白いから一生この音楽をやろう」っていう考えはないの。常に「何か面白いものないかな」「あ、今まで聞いたことないような音楽がある」って。すると、嫌いなジャンルが好きになっていく。(NHK スイッチインタビュー)

そう思うと坂本龍一もそういうアーティストだったんだろうなと思う。(本人も言ってるし)asyncを作った時に、自分の音楽には一貫性がなくて困っちゃいます、山下達郎くんとかと違ってみたいなこと言ってましたよね。
イニャリトゥ監督がキュレーションした企画盤を聞いた時に思ったけど、年代が違うごとに全然雰囲気が違うというかジャンルごと違うんだけど、そこには坂本龍一という何か一貫性がある。音は全然違くてもシグネチャーとなる趣を感じる。それはもう神業だなと思いました。
というか坂本龍一の音楽っていうか。本人の生き様が音に出てる感じ。
12が出た時わりとすぐにレコード盤を買って、ひたすら家で擦ってたんですが、(多分今年一番ターンテーブルに載せた)当時は本物の音のシャワーを浴びてる。という感想を持った。浴びる音楽というか。浴びていくごとに安らぐみたいな。神の領域のヒーリングミュージックみたいな。でも彼の自伝を読んでみると全然違う感想をもった。神のヒーリングミュージックとか言ってる自分が恥ずかしくなるぐらい。
自伝を読んだ今では最期の坂本龍一という地点から始まる永遠の音楽に触れられる喜びという方が自分の中では大きくなってしまった。
闘病を続ける中、彼を救う永遠の音楽とは何か、彼が自問してきた音楽とは何か、彼がその時何を聞きたかったのか、晩年のワークスを素晴らしい映画ともに掘って行ってますがその度にこの12と言うアルバムのもつ意味と音の層の一つひとつがかけがえのない意味を持ち始める。今までこんな気持ちになったアルバムなんてないかも。聴くたびに変わっていく。僕は12を再生するたび、最期の坂本龍一とちょっとだけ会話した気分になる。それをきっと数十年続けて行って、その時間の総体を見た時に、時間という概念を超えて音楽の永遠の中に自分が閉じ込められる。そんな感じでこの先何年も聴き続けて、大切にしたい作品になりました。

他愛もない独白を読んでくれてありがとうございます。個人的な発信ではありますが、サポートしてくださる皆様に感謝しています。本当にありがとうございます。