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拡大するTypeBeat(タイプ・ビート)文化、その理由と具体的な活用

*この記事は2019年8月21日に執筆したものの再掲です

Youtube上に『Type beats』というタイトルの動画を見かける機会は最近多くなってきましたよね。今回はそのタイプビートの話です。今回は、寡聞ではありますが、実際にタイプビートを利用している自分の視点で、タイプビートについての活用方法を話していこうかなと思います。
まずはじめに、タイプビート(タイプビーツ)とは何かという話です。定義的な疑問についてお答えしましょう。


タイプビートとは?

タイプビートとは「〇〇っぽいビート」という意味です。


例えば「Drake Type Beat」とは「Drakeっぽいビート」という意味です。もしも、Chance The Rapperがラップしそうなトラックが欲しい場合は「Chance The Rapper Type Beat」とYouTubeで検索してビートを探すわけです。アーティスト名以外にも、楽曲名に絞って「This Is America」っぽいトラックを探したければ「This Is America Type Beat」と検索すればいいのです。

https://mcknsy.wordpress.com/2019/01/29/type-beat-explained-in-japanese/ 

このようにビートを探しているラッパーが検索する手段としてtype beatsが主流になっています。自分の好みのビートを的確に見つけることができます。


あるアーティストの事例


タイプビートで音楽をやるミュージシャンは、最近では珍しくはありません。例えば、全米シングル・チャート最長1位の新記録を樹立したLil Nas Xの「Old Town Road」のビートは19歳のオランダ人プロデューサー、Young KioがBeatStarsで販売していたタイプビートです。


他にもFetty Wap、Joey Bada $$、Bryson Tiller、Young MAはすべて、ウェブで選別されたビートを使用してヒットを記録しました。A$AP Rockyは、YouTubeで「A$AP Rocky type beat」を検索して、自分の曲のトラックを発見したことを認めました。

また、Desiignerの「Panda」は”Meek Mill–Ace Hood–type beat”のビートを200ドルでリース契約し、購入して作られています。現在、Spotifyでは8億回再生、youtubeでは5億回再生というヒットを叩き出しています。


また、Eli Noirというアーティストはタイプビートを用いて楽曲を発表しているアーティストですが、楽曲「Wonder Why」は 多方面から評価され、『nourish.』『aviencloud』などの有名サブミッションメディアのピッチにも成功しています。実際にフロアでもかかることもありますし、多方面で話題になっているようです。


タイプビート文化はどのように拡大したか

ではタイプビートはどのようにして拡大し、注目されてきたのでしょうか?

2016年から本格的に拡大
以下のグラフはGoogleTrendからの人気度の動向です。このグラフからは2013年からタイプビートは拡大していったことがわかります。Desiignerの「Panda」がリリースされた2016年あたりから一気に注目度が高かったとも言えます。

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一方日本のデータはかなり不明瞭です。0のところもあれば100の値まで達しているところもあります。検索数が圧倒的に少ないということが原因としてあげられるかと思います。人気度も低く、日本ではまだ浸透していないのでしょうか。日本と海外ではタイプビートへの認識に差がかなりあるようです。

個人クリエイティブ・DIYの環境が整ってきている
拡大の大きな一員として、タイプビートで音楽をやる環境が整ってきていることがあげられます。BeatStarsやAirbitのビート販売サイトが充実化し、ライセンス問題や決済など、多くの課題が解決されています。


デジタル・デストリビューターの登場
さらには、個人単位でクリエイティブできてそれを発表する土台が出来上がってきたからだと思います。そこで象徴されるのがデジタル・デストリビューターの登場です。
デジタル・デストリビューターとは、音楽のリリースを代わりにやってくれる代理店のようなものです。そのサービスに登録し利用料を払えば、全世界の多くのプラットフォームにて楽曲をリリースできるのです。世界で代表的なデジタルデストリビューターは、AWAL、BELIEVE、LANDRなどがあげられます。



アーティストがタイプビートを広めてくれる

また、拡大の一因としてあげられるのがタイプビートを使用したアーティスト経由の認知です。先ほどgoogletrendでも示しましたように、Desiignerの「Panda」がリリースされた2016年あたりから一気に注目度が高まっています。


実際のタイプビート活用方法


では実際には、どのようにタイプビートを使用し、自身の楽曲を披露すればよいでしょうか?ここからは実際のタイプビートの使用例を体験談も交えながら説明していきます。大まかに言えば下記の手順で楽曲をリリースすることになります。まずはトラックを選ぶ作業からです。

* 曲・トラックを選ぶ
* ライセンス購入
* リリース


見つけ方
では、どうやってタイプビートの動画を探すのでしょうか。僕の場合はYouTubeでひたすら探します。『好きなジャンル・アーティスト+ type beats』と検索すると動画がたくさん出てきます。やっぱり自分の理想の音を見つけるのはなかなか難しくて。100個動画みて1つあればって言う感じの確率ですね。だから、今YouTubeに存在するタイプビートの動画は全部みたんじゃないかってぐらい。そんな感じの勢いと熱量でやってます。笑


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YouTubeで気に入ったタイプビートを見つけたら、その動画の説明欄に記載されている購入リンクからBeatStarsやAirbitといった、ビート販売サイトへ行き、そこでビートをすぐにダウンロード購入することができます。
最近僕は、BeatStarsから直接音源をディグルこともあります。ある程度好きなトラックメイカーやジャンルはわかってきたので、フォローやライクした結果から生まれる「フィード」をみて新しいトラックに出会っているという感じです。


ライセンス契約の仕組み。
どのライセンスが良いかは自分のスタイルによって分けましょう。大概はこのようなプランです。
* Non-Exclusive ($24.99): MP3+使用制限あり
* Premium Lease ($34.99): MP3+WAV+使用制限あり
* Trackout Lease ($69.99): MP3+WAV+Stems+使用制限あり
* Unlimited Lease ($199.99): MP3+WAV+Stems+使用制限なし
* Exclusive (最高付け値): 独占使用

beatstarのライセンスはこのようになってます
* 『今はお金がないけど試しにリリースしてみたい』という人はNon-Exclusiveやbasic plan
* 『再生回数が見込めてライブでも演奏したい』という人はpremium planを
* 『排他的に、独占して楽曲を作りたい。』そんな場合はExclusive planを選びます

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それぞれ目的に見合った値段なので負担も少ないし負担も少なく楽曲制作に取り組めます。
上のプランの中にある、Stemファイルとは、パラデータでベースやドラムなどのファイルがまとまっているデータです。本格的にリミキシング、マスタリングしたい人におすすめです。


Stemファイルはマルチ・チャンネルのオーディオファイルです。例えばベース・ドラム・ボーカル・メロディといったように、ひとつのStemファイルの中には4つの音楽要素が含まれます。各エレメントに対して操作を加えることができるので、これまで不可能だった方法でのミックスが可能です。[引用:https://www.native-instruments.com/jp/specials/stems/]


一つここで生まれる大きな課題が、そのトラックが独占的じゃないことです。独占的じゃないからこそ安い値段で低価格で利用できるのは確かなんですが、やっぱり自分以外の人が同じトラックを使って曲を作っているとShazamも難しくなるし、トラックが唯一のものではありません。コンテンツIDの登録やクレジット表記についてはライセンス書をしっかり読んで確認をしましょう。


権利管理は全てライセンス書で


ライセンスはすべて英語なので解読する必要もあります。ライセンス書には、使用方法やライセンス期間の明記、著作権について記載があります。有名なメロディーや詩が大胆に入った楽曲は他者の著作を無断で使用していないかなどの注意も必要です。

【雑感】タイプビートから見た世界のトレンド感

タイプビートといえども、かなりの種類のジャンルが混在しています。(著者はR&Bフレイバーがあるものや、ポップス寄りのものをチョイスするので、軸としては偏りがあります)


[2017] 『trap』や『Old school Rap』Drake など

2017年ごろ、当時はR&B系のビートに特にアーティストの名前はなく、『R&B type beats』『emotional R&B』という表記が多かった気がします。タイプピーツで探せるものと言えば、トラップ系のヒップホップのみ。その時から僕は力強いヒップホップではなく、生音を強調したオーガニックなR&Bをやりたかったので、ビートを探すのにはすごい手間がかかりました。
2004年からのもっとも人気なキーワードは「drake」「future」「j cole」 などですね。このアーティストたちは、タイプビートでは殿堂入り、定番となっています。



[2018]K-Popとchillの台頭

2018年以降はK-Popとchillの台頭がかなり顕著に見られます。その頃からビート× R&Bみたいな構造のビートが増え始めた気がします。DEAN typeやCrush typeのタイプビートが出始めてきました。 今現在ではpH-1 や Sik-K、GroovyRoomなど、k-popビーツはかなり増えてきているなと感じています。


この動画タイトルは2019になっていますが、実際には2017年に発表されたものです。常に検索上位にするために『2019のトレンドっぽい』という意味でタイトルテキストを切り替えているようです。当時はタイプビートという文化も浅く、単に『Insturumental』と表記されることも多かったですね。

よりオーセンティックなR&Bも
また、同時期にはアンビエント寄りではあるけど、オーセンティックなR&B、インディ・DIYを感じるギターなど、そういったビートも増えてきました。Daniel Ceasar, SZA, Khalidなどをよく目にします。

https://www.youtube.com/watch?v=5oqNQV8VyJE


[2019]アフロビート、シティーポップの隆興
現在のトレンド感(2019年上半期)でいえば、J-Pop type beatsもかなり増えてきてると実感します。多分シティーポップが海外に再評価されている影響なのかなと。以前はCityPopのビートはほぼ無かった感覚です。

さらに2019年に入ってからはアフロビートが多いなと思っています。アフリカの系の音楽ですね。グローバル化による地域性の再発見がタイプビートにも表れているようです。


タイプビートは没個性的か?

音楽家にとって作曲や、詩の定義はそれぞれです。〜っぽいビーツ、というと没個性的で、パクリのように聞こえるかもしれませんが、ビートメイカーの作ったビートに、メロディーと自分の言いたいを歌詞にすればそれは唯一無二の作曲ですし、作詞の一つではないでしょうか。国境を超えて、ジャンルそのものが融解した、ミックスドされた、音楽。ミックスマスターで、たくさんのツールを使っていろんなジャンルの境界線を溶かして、また縫合していくのです。


集合知を最大限に生かせる

タイプビートは、ある意味「分業する」ことによって、自分が特化した分野に集中できます。トラックメイカーは別にいて、自分が歌詞とメロディーを作る。プロデューサーのトラックを自分の知見とセンスでミックスするんです。そうやって生まれる集合知を最大限に生かせるのがタイプビートです。

またアマチュアレベルから参加できるのもいいポイントです。従来のやり方では、スタジオレコーディングが主流で、それをするために資金やメンバーを集める必要がありましたから。でもタイプビートでは不要です。自分が思う新しいアプローチをインディペンデントなスタンスでクリエイティブ出来るのです。


最後に

楽器も弾けないし、楽譜も読めないけれども、こういうやり方だと音楽を作れる。とりあえず、何かやってみようという気概で、タイプビートに挑戦してみてください。才能の引き出しを開けて、自分の信念を持って、自分のやりたいことをちゃんとわかって、何かを表現する。そうやってクリエイティブしたものは必ずオリジナルだし、唯一の音楽になるはずです。


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okkaaa
他愛もない独白を読んでくれてありがとうございます。個人的な発信ではありますが、サポートしてくださる皆様に感謝しています。本当にありがとうございます。