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丘の上の本屋さん

2021年公開のイタリア映画「丘の上の本屋さん」を観た

のどかな田園風景を見下ろす古い町の丘の上で古本屋を営む年老いた主人公は持ち前の読書愛好家として蓄積された知識とユーモアを交えながら接客している
時々、隣のカフェ&レストランでウエイターとして働く男が差し入れやおしゃべりをしたりしに来る
ある日、店の外に置いてあるマンガを眺めている少年が本を買う金が無いので主人公はマンガを貸してやることにする
そこから一冊読み終わるたびに本について話合う主人公と少年の交流が始まり・・・

主人公を演じているのは「フォードvsフェラーリ」でフェラーリのボス役だったレモ・ジローネ
実年齢70を超えて主人公役をやっている彼の演技はその役柄も相まって渋くて人生の深みを感じさせてくれる
一方で少年役のディディー・ローレンツ・チュンブは目力がすごくてさ
若いころのマイケル・ジャクソンにちょっと似ててクールでハンサム
これから世界に出ていくのかもね

観終わってから考えるとこの映画もかなーり低予算で作ってる感じ
古本屋が入っている古い建物とその近くにある公園、それから周辺の山や農地を耕してるトラクターなんかが俯瞰で出てくるくらいだからさ
それでもラストシーンはホロリと来ちゃったから、感動する映画を低予算でも作れるいい例かもね

あと、本作で流れている音楽がいい感じなのよ
なんというか、こう時間がゆっくり流れてる感というか優しさを演出しているというか
その辺も感動のラストシーンへ一役買っているかもしれないね

※こっからはネタバレなので嫌な人はそっと離れてね※



















ストーリーとしては古本屋のおじいさんと少年との交流がメインで、合間合間に本にまつわる個性的な客や隣のレストラン勤務しているウエイターの恋物語や売りにきた古本の間にあった女性の日記の朗読なんかと町の美しい風景が差し込まれてる

なにより主人公の少年との交流の時に見せる笑顔がまた優しくて嬉しそうでさー
見てるこっちもホッコリしちゃう
少年に貸し出す本も『星の王子さま』とか『白鯨』とか世界の名作ばかりでその本について語り合う二人の会話もなかなか深い
劇中では主人公の家族の話は一切出てこなかったけど、どうも独居老人ぽいから孫とのふれあいって感じで嬉しかったんじゃないかな

途中からなんとなく話の展開が読めてきて、あー、最後におじいさん死んじゃうんだろうな、と思ったら案の定だった
よくある遺言みたいな手紙を少年が読んで終わるんだけど、ちょっと「ん?」と思ったのは最後に少年に「これは貸すんじゃなくて贈り物だ」と渡した本
クレジットに入る直前にその本の題名が出るんだけど『世界人権宣言』だって?

んー、これはもしかしたらまだまだ世界中にはびこる差別や貧困なんかへ人は皆平等ってことを訴えた強烈なメッセージなのかもしれないけど
いきなり現実に引きもどされた感があってちょっと萎えた

まーでも、主人公のおじいさんは派手さは無いけど好きな仕事をずーっと続けることができて、最後の最後に少年と出会えて幸せだったんじゃないかな



デジタルに囲まれた世界に生きていると忘れがちだけど、アナログな本や人、自然との交流ってやっぱ大切

そんなことを感じた映画ですた


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