月刊おきにのうつわ|第五回伝活 〈京都の金属工芸〉
暮らしの中で、金属は今や当たり前に存在しています。
改めて家の中を見渡しても、窓のサッシ、やかん、クリップ、携帯電話の中身、ベルトのバックル、アクセサリー、はたまた骨折経験のある方は体内にも金属が入ってるかも。
そんな、金属の加工のなかでも、長い時間を掛けて築かれて来た、伝統的な技法を受けて作られている京都の金属工芸に今月は注目してご紹介したいと思います。
先日、京都金属工芸協同組合の創立50周年を記念した展示会へ行ってきました。金属を材料にして、神社仏閣で使うものや茶道具、家庭内での装飾品、アクセサリーなど多岐にわたる用途の作品が並んでいました。
また、この組合は「金属工芸」とひとくくりして名前が付いていますが、その作品の作り方は様々。こんなにも色々な種類があるのだと、改めて感心しました。
金属工芸の主な技法として、
お茶に使う釜やお仏壇にあるおりん など、溶かした金属を型に入れて冷やし固めて形作る…
「鋳金(ちゅうきん)」
(我が家のおりん。子供の前では楽器と化します。で、怒られる)
平らな金属板を槌で何度も何度も叩き、何種類の槌を使い分けてさらに叩いて、皿や鉢、壺、鍋など立体に成型して行く…
「鍛金(たんきん)」
(鍛金の技法で作られた木の葉型の銘々皿/金谷五良三郎)
鏨(たがね)を使って金属を彫り、模様を付けて装飾していく「彫金(ちょうきん)」
金属の生地に釉薬を施し窯で焼成して作られる「七宝(しっぽう)」
金属に鏨で溝を掘って布目を作り、そこに金や銀の図形などを槌で埋め込み漆を塗って仕上げる「象嵌(ぞうがん)」
金属の様々な技法を取り入れアクセサリー、寺社建造物を彩る「錺り金具」など、もっと深く知れば知るほど色々な技があります。
そんな京都の金属工芸を身近に感じていたいと、数年前オーダーしたのが結婚指輪。宝飾品も職人技が光る産業で山梨などが有名ですが、工芸品をPR活動している私たちなので、普段お茶道具を作ってらっしゃる金属工芸師さんに無理を聞いてもらって作っていただきました。
(お茶道具にも使われる技法も入れていただいています/16代金谷五良三郎)
また、金属で出来た一輪挿しも私のコーディネートに度々登場しています。
すっとしたフォルムの一輪挿し。実は底にマグネットを仕込んでもらい、テーブルクロスの下に入れた金属板に付けて自立するようになっています。
(蔦模様を施した一輪挿し。実際に蔦をいけて(写真左)/仁科旗金具製作所)
銅の成分がある金属で作られた花瓶なら、花を長持ちさせるために10円玉を入れるように鮮度を保つ効果を期待できるんだそう。
神社やお寺に行くとここかしこに金属で出来た灯篭や襖の引き手、釘隠しなどの装飾品などが目にすること出来ます。ぜひ、見かけられましたら職人がどんな風に作ったものか思いをはせてみてください。
〈おまけ〉
私たちが結婚した際、結婚パーティーとは別に、ものづくり仲間たちが入籍を祝うパーティーを開催してくれはった折りには、金属工芸のケーキナイフをご用意くださっていました…。これは大事に保存しています。
(オリジナルケーキナイフ/仁科旗金具製作所)