アシュラ2019 ~アシュラハウス~
~元ネタ~
平熱43度 Relation vol.2
アシュラ
スピンオフパロディ 「アシュラハウス」
この投稿は平熱43度ファンのいち個人として
投稿する舞台のスピンオフパロディです。
東京の中心、日本の中心が崩壊し、
ここがかつて日本の首都であったなどと
誰が想像出来ようか。人々は突然現れた
新生人種の力に恐怖し、その手に武器を持った。
新生人種もまた、惨殺されていく同胞たちを守り、現生人種を駆逐しようと「新生人種組成アシュラ」を結成した。
新生人種の超能力の前に現生人種達の武器はあまりに効果的でなく、新生人種たちの統治は着々と進んでいく。 そんな世界のお話。
ではありません。
現生人種と新生人種が共存する世界
それがアシュラハウスの世界です。
東京。アシュラウイルスにより超能力に目覚めた若者達が溢れ彼ら、彼女らは新生人種と呼ばれていた世界。そんな世界で逞しくも微笑ましく生きる彼ら、彼女らの共同生活を送る場所。それが
「アシュラハウス」である。
「小春、その、あれだ。家には連れていけないぞ。」
「いいもん。京兄ちゃんには抱っこさせてあげないもん。」
「ちょっ、小春。それズルい。」
「尚也、紗来さんにも内緒だからな。」
「えっ、紗来さん。可愛いって、、、言ってくれると思ってたのに。」
小春が抱いているもの。それは猫だ。4人で遊んでいた先で偶然出会った猫。
「猫さん、可哀想だもん。」
その猫に小春はいつかの自分達を
重ねていたのかもしれない。
猫を見やるその目は小春を見る茜のような目をしていた。
「猫かぁ。あの家、ペット禁止だったよなぁ。」
「ペットじゃないよ。家族だもん。」
「小春、お前。どこでそんな事覚えて来たんだ。」
「猫って言うか。名前どうする?」
「透馬、名前着けたら余計見捨てられなくなる、、、。」
京介の視界の端に、目で訴える小春が見える。
「はぁ~。仕方ない。名前な、名前。」
小春の表情が明るくなったのを見届けると共に、
京介は猫を見る。
「赤っぽい模様があるから、シュウでいいんじゃないか。」
「赤なのにシュウ?」
「赤だけど赤じゃない朱色って色があるんだ。」
「京介さん、それにしましょう。」
「よろしくね、シュウちゃん。」
かくして、猫はシュウとなった。
猫はまだ小さく、びくびくしながらも小さく鳴いた。
ペット禁止のハウスで飼う事は出来ない為、4人で考えたのは庭にある小さな花壇の横。あまり人目にも付かず、秘密裏に飼うには絶好の場所である。
「最近小春達、外によく出るようになったわね。」
小春の姉、茜と紗来がはしゃぐ子供達を見ながら呟く。
「まだ子供、ですからね。」
「私達は施設で育ったから。いつも高い塀に囲まれてた。私の超能力で未来は予知出来ても、塀の外を見る事は出来なかったの。ずっとずっと憧れていた外の世界。」
「私は、、、。」
茜は紗来の言葉の続きを遮り部屋へと戻る。
紗来はと言うと、誰に言うわけでもなく一人呟く。
「、、、、平和、、、か。」
「おーい。お前ら、こないだの秘密基地に行こうぜ。」
京介が声を掛けると、4人はどこかへ行ってしまったようだ。
「ん?一人か?」
「ええ、何だか風に当たっていたくて。伊丸岡さんは?」
「俺は、コレだ。」
伊丸岡はそう言うと、上着の胸ポケットからタバコを取り出し火を着ける。
「あぁ、タバコですか。」
「邪魔、だったか?」
「いえ、どうぞ。ごゆっくり。私は部屋へ戻りますから。」
伊丸岡は「ふぅ~。」と一人、タバコをふかしていた。静寂。伊丸岡の好きな時間。
風の音が聞こえ、自分のテリトリーに誰もいない時間。空間。この時は、何も考えない。
ただ、空気に、風に、世界に身を委ねるのだ。
「・・・・」
不意にどこかで何かが聞こえてくる。
「ちっ。」
好きな時間を邪魔された事に若干腹を立てつつ、周囲を警戒する。
「花壇?」
伊丸岡はその発生源が花壇の横、
普段なら気にも留めない場所に歩み寄る。近付いていくと、それが鳴き声であることがわかり、更には特定する。
「何だ、猫かよ。何でこんな所に。」
訝しげな表情を浮かべるも、猫の状態を一目で判断し、どう行動すべきか。数秒の思案。
「ちっ。」
「いつものタバコ、とこれを。」
行きつけの店。いつものタバコを買う。
と同時に買うもの3つ。
ハウスの庭先の花壇の横。猫は相変わらずの状態で、小さく鳴いていた。
「おぅ、待たせたな。」
タバコと同時に買った3つのうちのひとつ。
猫缶。
伊丸岡は数歩さがると、適当な所に座りタバコに火を着ける。
「ふぅ~。」
その間、猫ははじめ警戒しながらも相当に空腹だったのか猫缶ひとつをカラにした。
「お前相当に腹、減らしてたんだな。戦地での最大の敵は空腹だ。覚えておけ。」
ガサガサと袋から次の物を取り出す。
「次は、これだ。分かるか?
これはちゅーるだ。」
伊丸岡は猫に話しかけながら猫にちゅーるを近付ける。猫は一度、ぺろりとすると余程気に入ったのか食いついて離れなくなる。
「おいおい、そんなにガッツくな。これはお前のもんだ。」
ちゅーるに食い付く猫を伊丸岡はただ眺めていた。
「なぁ、お前も一人、なのか。」
ちゅーるを離さない猫にちゅーるを預けると、タバコに火を着ける。
「これはこれで飽きないもんだな。」
猫がちゅーるを食べ終わるまで、伊丸岡はタバコをふかしながら目を細め、その場を離れる事はなかった。
「さて、次はこいつだ。」
伊丸岡が最後に取り出したのは、昆虫の形をしたおもちゃ。柔らかい素材の子供が遊ぶような、アレである。
「あの店、こんなものまで売ってたんだな。」
伊丸岡が地面に置き、軽く足で蹴飛ばすとおもちゃは勢いよく飛び、猫はハッと注意を向ける。
「そら猫よ。狩りの時間だ。」
そう言うと伊丸岡は数回おもちゃを蹴飛ばす。その度に猫は反応を示し、遂には飛び付いて見せた。
「ほぅ、やるじゃねぇか。」
伊丸岡はタバコに火を着けると、
満足そうに頷く。やがてタバコを吸い終わると「じゃあな。」
とその場をあとにした。