俳句結社「りいの創刊15周年記念俳句賞」大賞句
秋桜
捨てられし長靴へ草青みけり
やどかりの引きずつてゐる脱殻よ
鉢底に煙草隠せる四月馬鹿
病室に牧師の賛美梅雨夕焼
死に近き人の寝息や初蛍
満ちてゆく永別の日の夏の月
とうすみや誰にも会わぬ窓を開け
夏草に負けぬ命と引きにけり
地球儀の国の彩り大南風
諍ひの記憶摘めりさくらんぼ
黴臭き昭和の写真捨てちまふ
与那国の果の故郷や星涼し
ていねいに簾を捲けり家売る日
ちぐはぐな椅子よ机よ秋の風
風入れて一人のたつき新豆腐
四畳半の窓によく鳴る秋風鈴
草の花遺影に二三本添へて
生きるてふ身辺整理昼の虫
役目終へし旅券の束や秋の雲
顧みるたびに揺れゐる秋桜
(辺野喜 宝来)