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What is a management?

そもそもマネジメントとは何か?

残念ながら日本のホテルでは、マネジメントを育てると言う文化はほぼないと言って良い。昔は終身雇用だった日本のビジネスマンたちは、とにかく下積みを修行の如くやらされ、マネジメントと言うよりは専門職のスタッフとして育てられる。それはそれで昔は機能していたが、そもそも終身雇用と言う文化がほぼ崩壊し、情報化社会で若者たちが自分でキャリアアップの情報を得れる時代になった。そうなると、優秀な人材であればあるほど次のステップへ進みたくなり、同期とほぼ横並びで給与が上がっていったり、業務の幅の広さも横一線となると、向上心の高い者は外にチャンスを見出しに行く。
僕はラッキーなことに、イギリスで勉強させてもらっていたので、海外での完全分業制(マネジメントと専門職は別)の考え方もなんとなく理解していた。ロンドンから帰ってきて、フォーシーズンズホテル椿山荘に新卒で就職した。フォーシーズンズホテル椿山荘の運営会社は藤田観光であり、組織はコテコテのドメスティック(日系)カンパニーだった(25年前の話なので今はだいぶ変わっていると思います)。FOUR SEASONSはマネージメントコントラクトを専門として世界中にあるファイブスターホテルチェーンである。なので、ここでややこしいのは、マネジメントは外資系であって、中身はドメスティックであると言う矛盾が発生する。実際の運営は大変だったと察する。自分は新卒から5年ほどお世話になったホテルなので、そこまで内部事情は正直わかっていない。ここはあくまでも推測だが、運営は非常に大変だったと思う。しかしアジアで唯一の、そしてはじめてのFOUR SEASONS HOTELである事は、日本のホテル業界にとってかなり貢献したホテルではないかと思う。
さて、話を戻すとFOUR SEASONS HOTEL椿山荘で働いたと言う事は外資系のホテルで働きながら、日系の会社の文化で経験を積んできたと言うこと。だから5年なんぞは下積みでしかない。ただし、下積みとわかっていて適当に時間を潰すほどもったいない事は無い。自分の成長が止まったと思ったときには、自分から手を挙げて異動を希望した。おかげで5年間で3つの部署に携わることができた。しかしほとんどのそこの従業員は、その部署に何年も働き、その部署内ででキャリアアップして行っていた。10年経ってようやくキャプテンなんていうのはザラである。それが悪いと言うわけではなく、単に自分の価値観とは合わなかった。だから4年目位には、その次のステップを見据えたキャリアプランを立て始めた。

Four Season Hotel at Chinzanso (現ホテル椿山荘)は、アジアで唯一のフォーシーズンズだった。

そこで次のステップに選んだのは同じFOUR SEASONS HOTELでも丸の内の新規開業だった。当時57室の世界最小のFOUR SEASONS HOTELだった。ここでようやく本題に近づくのだが、自分がアシスタントマネージャーまで上り詰めたときに、ディレクターのマックスがある時僕に質問した。その質問というのが、

What is a management?

だった。
非常にシンプルな質問だったが、質問の意図がよくわからない自分はこう答えた。

若いスタッフをトレーニングしたり、シフトを作成したり、業務改善したり、接客をしてお客様をつけたり、等々レストランの運営に関わる全てのことをやる仕事だ。と答えた。

マックスの答えは非常にシンプルだった。

Management is to achieve goals through the people. 
(人を介して目標を達成することだ)


彼が言いたかったのは、自分で全てやっているのはセルフマネジメントであって本来のマネジメントではない。人を介して目標達成すること、これがマネジメントだと言うのだ。聞いてみれば確かにそうなんだが、若かれし頃の自分は、これが目から鱗だった。自分1人でできるビジネスは大きさが限られる。でもより多くの人を巻き込んで、その人たちを介した目標達成は、かなり大きな仕事となる。これがマネジメントにおけるダイナミクス(醍醐味)である。同じmanagerでも大きなチームをmanage出来れば出来る程優秀と言う事だ。

若いマネジメントスタッフの皆さんも、ぜひ今の自分の仕事を考えてみてもらいたい。果たして自分は本当にマネジメントの仕事をしているのか、専門職の延長線の仕事をしているのか。

小さいチームであれば、自分もプレイヤーとして動かなければならない時もある。小さいチームと言う事は、小さいビジネスであるからそんなに労働力(人件費)をかけれないからだ。でもより大きな目標をより多くの人を介して達成するときは、自分が先頭に立っていたら、現場の事はよく見れるが、その先は見えない。間違った方向に進んでいても気づかなくなってしまう可能性もある。例えは悪いが、戦争で大統領やその国の長が先頭を切って最前線で戦うだろうか?時にはそういう事も必要かもしれないが、その時はきっと最終手段の時であろう。スポーツの世界でも一緒。監督は試合に出ない。試合に出て疲れ果てていたら、プレイヤーとしての仕事もやりつつ監督としての正しい判断をタイムリーに行う事は難しい。

いろいろなマネジメントスタイルはあるが、この考え方が基本となるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。

当時は珍しいブティックホテルで57室の世界最小のフォーシーズンズ丸の内。当時レストランはekkiと言うモダンフレンチで、タイユバンロブションのカリナリーチームやParisのGerge Vのスーシェフがヘッドシェフで来た。サービスはロオジェのメートルの永井さんやロブションの小山君、アピシウスから小澤さんなどスーパースターが揃っていた。

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