#教師のバトン ③ 命の順番

初担任の時の話。


4月の健康診断で、クラスの生徒が心臓検診で「再検査」になった。
彼は小さい頃からサッカー一筋。毎日の部活動に加え、朝晩のランニングを日課している、屈強な男児そのものだった。その彼に、再検査結果が出るまで日常の軽度な運動を除きドクターストップがかかった。

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学校の親睦行事としてGW後に、長距離ハイクが予定されていたが、歩きとはいえ25キロ以上の距離があるハイキングは禁止項目の一つ。彼はとても楽しみにしていたこともあり、そして日々の彼の様子を見ていて、なんとか参加できないかと考え、どうしても自宅学習という選択肢を提示できなかった。


それを学年主任に相談したら、一喝された。


「心臓検診の再検査の結果、なんでもなかった、ということかもしれないけれど、もし異常があったとき、生徒の命に関わることなんだよ。」


そしてこう諭された。


「沖さんは、人の死は年齢順に訪れると思っているでしょ?でもね、そうじゃないんだよ。長い教員生活の中で、教え子の死を経験することになるかもしれない。病気も命も順番じゃないんだよ。」


定年間近の学年主任は、それ以上は口に出さなかったけれど、数人の教え子を思い浮かべていることは明らかだった。

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その後の再検査の結果は異常なしで、彼は再び朝夕のランニングに汗を流し、Jリーガーを目指して大学に進学した。


命あっての物種 なのだ。 生きてさえいれば。 


担任としての心構えを教わった。


あれから十数年。保護者会の日にふとそんなことを思い出した。

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