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No.1367 細面の義経

数日前に駅前からバスに乗って帰りました。バス賃は180円ですが、財布の中身は210円でした。

赤信号でバスが停止している間に100円硬貨を両替機に投入して細かくしました。バスからスムーズに降りるためです。
「ジャラジャラジャラッ!」
と音がして、受け取り口に50円玉1枚と10円玉5枚が出るはずでした。
 
ところが、出てきたのは50円玉1枚と10円玉4枚と100円玉1枚、都合190円でした。
???
右手に取り上げてよく見ると、ナ・ナ・何と韓国の100ウォンが入っていました。あらま!
 
すぐに、右手を運転手に差し出しました。
「こんなのが入っていました!」
 
さて、みなさんが運転手だったら、どうされますか?
「その時、義経少しも騒がず…」
能の「船弁慶」の平知盛の亡霊を前にした源義経ではありませんが、
「その時、運転手も少しも騒がず…」
一瞬にして、その100ウォンを認めたのち、その硬貨を受け取って、
「降りるときに、10円引きますから、言って下さい。」
と言って、バスを発進させました。実に落ち着いた物言いでした。
その時の、素早い対応をしてくれた彼の一言と態度にシビレました。
 
100ウォンは、ちょっと見、100円玉に似ています。ただ、100の数字の下にハングル文字が書かれてありますし、表(裏?)面には、李舜臣(イ・スンシン)という 朝鮮王朝の武将(1545年~1598年)が刻印されていますので、容易に見極められることを知りました。日本国内でも、100ウォンは紛れ込んでいることがあるのではないでしょうか?

どうして両替機の中に紛れ込んだのか?
どうして両替機がはじかなかったのか?
どうして1000円を両替した時の100円玉に紛れず、100円の両替で出たのか?
私でなければ、次の両替を行った人に出る可能性があったでしょうから、私は、あの硬貨に選ばれてしまったのです。事実は小説よりも奇なり?

その時、私は、この両替機のジョークのセンスを思いました。
100ウォンは日本円に換算すれば11円前後だとか?両替機は100ウォンを10円と判断して扱ったのかも知れません。「お前にわかるかい?この謎かけが!」と…。なかなか粋な(?)計らい(?)です。

それにしても、あまりに見事な運転手さんの判断でした。過去にそんな経験があったのでしょうか?そうは思えなかったのは、私が運転手さんのすぐ後ろの席に座っており、バスが停車する度に運転席の右の窓際に置いたその100ウォンを、しげしげと見ていたのを知っているからです。

私には、瘦身の運転手さんが「細面の義経」のように見えました。


※画像は、クリエイター・Re:TOHMINさんの、タイトル「歩いて関門海峡を渡る」の中の「壇ノ浦にある源義経像。八艘飛びの姿を描いた義経」の1葉をかたじけなくしました。お礼を申し上げます。