No.245 五輪に熱中、ご注意!
その日の朝の連ドラ「モネ」は、2016年(平成28年)の夏が舞台でした。リオデジャネイロ五輪大会が行われた年です。リオオリンピックと言えば、体操の内村航平選手の個人総合金メダル、見事な白井健三タンブリンも決まった男子団体金メダルや、水泳では萩野公介選手の400m個人メドレーでの金、金藤理絵選手の200m平泳ぎでの金、人類史上初めてのオリンピック4連覇を成し遂げたレスリングの伊調馨選手や、卓球女子団体で銅メダルに輝いた福原愛選手他の涙と笑顔は、今も忘れられません。
その日、朝ドラの主人公・モネこと百音が仕事から帰ると、下宿先の銭湯の大家・菜津の祖父・肇がぐったりしていました。折りよく、銭湯のコインランドリーに来ていた菅波医師に診察してもらうと、肇は熱中症に、妻の光子も軽い熱中症になっていたことが判明します。二人は、そのまま点滴を受けるため救急車で病院に運ばれました。百音は、菅波に説明します。
「お二人でずっと、オリンピック見てたそうです。リレーで銀メダル獲ったの、熱心にテレビで見てたらしくて。一昨日は一晩中、女子レスリングを応援してたみたいで…」
リオ五輪で「リレーで銀メダル」といえば、日本チームが男子4×100mリレーで銀メダルを獲得した快挙を言ったのでしょう。また、レスリング女子も金メダルラッシュに沸きましたが、レスリング女子53キロ級で4連覇のかかった吉田沙保里が決勝で敗れ、
「日本選手の主将として金メダル取らないといけないところだったのにゴメンナサイ」 と号泣した姿も深夜〜早朝の時間帯に中継され、涙を誘いました。
「それで熱中症か…。ありえるな。実はオリンピック観戦と熱中症には2,500年の因果関係があるんです。古代ギリシャの七賢人タレスは、世界の全ての根源は水であると言っていた哲学者なんですが、彼は古代オリンピックを観戦していて熱中症になり、それに伴う脱水で命を落としたと言われています。万物は水から生じて水に返ると言っていた人が脱水で命を落とすとは、ある意味水の重要性を自ら証明してみせたと言えますよね」
と菅波先生は説明します。私は、ヘーボタンを思いっきり乱打しました。
古代ギリシアの哲学者・タレス(B,C,624年頃~B,C,546年頃)は、我々が、中学時代に必ず学ぶ「タレスの定理」の生みの親です。
「半円に内接する角は直角である」
という有名な定理です。もう、2、500年もの歴史を持つ数学の学びだったのですね。
「体育競技を見物していて、暑熱と渇きと、そしてすでに老年であったために衰弱によって死んだ。 (中略) すべては水から生じて水に還る。そのような自然観を語った人が『脱水』で落命したとすれば皮肉である。」
とは、ディオゲネス・ラエルティオスによって、3世紀前半にギリシア語で書かれた『ギリシア哲学者列伝』(加来彰俊訳、岩波文庫)にあるお話だそうです。
我が家も連日連夜の東京オリンピックの競技に声援を送りながら一喜一憂しているわけですが、「オリンピック観戦と熱中症」との有機性をタイムリーに説明したものとして、ストンと腑に落ちる回でした。昨夜は、女子1,500mで、田中希実選手が8位入賞という快挙を達成しました。その名前の通り、まさに希望が実った瞬間に夫婦で快哉を叫びました。続く男子400mリレーでは、まさかのバトンミスによる途中棄権という波乱の事態に、声を失いました。ふと、喉が渇いていることに気づきました。
朝、6時25分からの「テレビ体操」でのラジオ体操と、7時30分からの「モネ」が一日の始まりのスイッチを入れてくれます。身体と心と目をシャキーンとしてくれます。今日も、水分補給しながら応援に頑張ります!