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No.1504 悪癖でしょうか?

返り討ちに遭ってしまったというべきでしょう。
 
人が、ちょっぴり困った表情をした時の美しさ(?)が見たくなると、ついつい質問してしまうというサディスティックな(?)悪癖があります。先日も、男子の多いクラスで、
「いったい、人生とは何でしょう?」
とやりました。
 
いきなり、不意に、唐突に、やにわに、卒然と、前触れもなく、訊かれた最初の生徒は、一瞬固まり、困った顔つきでしたが、真剣に考える目つきに変わりました。
「おっ、いいねー!」
と私の心の中では、どんな答えを開陳してくれるか興味津々です。
以下、読んでやっていただければ幸甚です。
 
「友人です!」
カーッ!最初っからそう来たか。人生に友人は大切な味のあるオイル、いや有り難い宝かも知れません。高校時代に、生涯の知友を得て人生の糧にしたいものですね。
 
「納豆!」
2番目の彼は、なにかと下ネタを持ち出してはクラスを笑いの渦に巻き込みます。こういう明るいスケベは、なぜか人気者で、みんなの目にも期待感が表れています。「人生、粘りが大切ですよね。」と意味ありげにまとめました。
 
「冒険です!」
おとなしそうな風情の彼ですが、「ほぉ!」と驚かせてくれました。心の脱皮の時期を蝶よりも一足早く始めようとしているようです。どんな冒険王になるのか、楽しみです。
 
「努力です!」
結局、人生はその連続だと思います。その認識で人生に立ち向かえば、可ならざるは無し。努力を惜しまず人生をチャレンジされよ。努力できることは一つの才能だと言われます。
 
次の男子は、「待ってました!」とばかりに早口で答えました。
「勇気は一瞬 後悔は一生!」
「おおっ!」とクラスがどよめきました。部活生の彼にとって、そのような体験的場面から導き出した学びでしょうか。どこかの漫画の1シーンだったりして?
 
「物語です!」
たしかに、人生は、自らが紡ぎ、また家族や職場で紡ぐ様々な物語で出来ています。モノローグの物語があれば、ダイアローグの物語もあり、人生を豊かに彩ってくれますね。
 
「運命です!」
彼が運命論者かどうかは聞きませんでした。しかし、我が身を取り巻く抗いようのない世界を知るにつけ、「偶然」では説明のつかない「運命」的なものを感じるのでしょうか。
 
「分かりません!」
素直にそう答えた男子は、色々な思いや答えがありすぎて一つに絞り切れなかったのかも。しかし、私も死ぬまで、いや、死んでも、人生とは何か分からないのかもしれません。
ひょっとしたら、彼は授業でやった『山月記』の文中の、
「分からぬ。全く何事も我々には分からぬ。理由も分からずに押しつけられたものをおとなしく受け取って、理由もわからずに生きていくのが、我々生きもののさだめだ。」
と言った主人公・李徴の言葉を背景に思い浮かべていたのかもしれません。巧みな男です。
 
「未来です!」
と彼が言うのを聞いた時、一瞬パアッと教室が明るくなった気がしました。春秋に富む若者たちが期待と不安の中、雄々しく未来に向かって行く人生に多幸あれと祈ります。私は、なぜか「過去」ばかり振り返るような過ごし方をしていたと「活」を与えられました。
 
「趣味です!」
独りの世界か、みんなで追い求める世界か分かりませんが、仕事一途だけでは勿体ない。趣味が仕事を後押ししたり、仕事が趣味に没頭させたりするようなイイ関係の人生でありたいですね。
 
「死にゆくまでの暇つぶしです!」
オイオイ、17歳にしては達観したような、見限ったような言い方だなと思いました。「穀つぶし」の私よりは良いかな?「暇潰し」とはいっても、彼の価値観に基づいているので高い視点からの放言だと受け止めました。
 
「階段です!」
だよね!一段一段踏みしめながら、昨日よりも今日、今日よりも明日を、去年よりも今年、今年よりも来年を実りと力をつけてステップアップしてゆく人生でありたいと思います。
 
「歴史です!」
彼らは中1の冬からコロナ禍の中での生活が始まりました。その後の中学2年間、高校に入っても1年間は本当に苦難の学びの歴史でした。来週からの修学旅行、楽しんでおいで!
 
「夢です!」
夢を見るのは、若者の特権ですね!下手な理屈をつけたり、逃げ口上を言ったりするのではなく自分の夢に向かって猛進する時代がイイ。人生の最後まで貫こうとするなら、なおさらイイ。
 
「楽しむ!です。」
これは、人生の解の一つですね。「晴れた日は晴れを愛し 雨の日は雨を愛す 楽しみあるところに楽しみ 楽しみなきところに楽しむ」(吉川英治)の心意気です。ガンバ人生!

「宇宙です!」
最後の生徒は、そう言いました。「人生とは?」「宇宙です!」何とも気宇壮大な、それでいてよくわからない、禅問答のようです。人類の近未来は、宇宙生活も視野に入っています。彼は、宇宙を取りこむ人生の青写真(古いか?)を書き込みつつあるのでしょうか?

「人生とは?」人の数ほど答えがあるのでしょう。最初の方こそ困った風の生徒たちでしたが、お互いに興がのって来たのか、クラスメイトの答えに素直な反応を見せ、思いのほか楽しい授業の入り口の時間となりました。普段、考えないからこそ、閃いたり考え付いたりする瞬間の妙を面白く感じてくれたのかもしれません。もうちょっと、困った顔も見たかったな!かえって、やられちゃったという感じでした。

「人生の第何章の初暦」
塙告冬(はなわこくとう)
暦は、もう如月を迎えています。


※画像は、クリエイター・めでたいこさんの「Canvaでnote見出し画像制作:チョイス」の1葉をかたじけなくしました。人生の岐路に何度か立たされました。これからもあるでしょう。どう生きるのか、どう生きたいのか、問われているようです。お礼申し上げます。