No.1123 教え子からのEメール
以前、紹介したことがありますが、プロセスをちゃんと踏んだから大きな喜びに出合えた、そんなお話です。
21世紀が始まった年の9月に、日本の音楽大学からドイツ・エッセンの音楽大学を受験した教え子がいました。本人曰く「受験合格後、プラッツ(指導教授の持っている席)の空きがあったので入れました。」という強運の持ち主でもありました。
様々なことを経験した4年間でしたが、彼女はさらに大学院への進学を目指すようになりました。ところが、お国変われば何とやらで、大学の受け入れの事情で進学が困難になったそうです。彼女は大いに傷心し、いっそのこと日本に戻るか、それとももう一年ドイツで頑張って再起を図るか、ずいぶん悩んでいたそうです。
すると、ロシアからドイツに留学してきていた音楽大学の仲間の女性から、
「ロシアには、
『神は、欲しい物を与えるのではなく、必要な物を与える。』
ということわざがあるの。今は、あなたにとって必要な時なのよ。」
と言われたそうです。その言葉に感動して、彼女は心機一転、もう一年ここで頑張ろうと決めたそうです。
たぶん聖書の章句にあるのではないかと探してみたのですが、同じ言葉を端的に言い表したものを探しきれずにいます。しかし、洋の古今東西を問わず、「欲しい物よりも必要な物」を尊ぶ価値観は変わらないのではないかと思います。
その悲しみに耐えて頑張った結果、彼女は、その翌年、晴れて大学院合格を決めました。そして向こうでピアニストとして生活していましたが、白馬に乗った(?)王子様にめぐり合って結婚し、今は家族四人でミュンヘンに住んでいます。
苦しい胸中にありながらも、あの一言にめぐり合い決意したおかげで、大きな喜びを手にすることが出来ました。
今の私にも、これからの私にも「思うようにならない必要な時」が必ずあると思います。愚痴や不平不満ばかりの怏々とした生活を送るのではなく、自分にとって大切な時なのだと視点を変えて生きる方法もありますよと教え子から教えられた気がしています。
※画像は、クリエイター・Tome館長さんの、「ピアノ発表会」の1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。