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No.1272 はて、面妖な?
数日前の午後4時半過ぎ、迎えに来たカミさんの待つ校舎内の駐車場に向かいました。車のすぐ近くまで来たときに、
「せんせーい!」
と帰り際の3人の女生徒が、いきなり声を上げて走って来ました。
そのうちの一人が、
「あーよかった!私、今日で学校辞めるんです。写真一緒に撮らせてもらってもイイですか?」
私に返事の隙を与える事も無く、
「ハイ、カメラカメラ!」
と友達にスマホを向けさせます。
「え?お父さんの転勤か何か?」
「えぇ、まあ。」
それ以上のことは話しませんでした。
「ポーズとってください!」
と言って、彼女の右手がハートの半分になり、私に左手を添えよと無言の圧をかけます。
「しようがないなー、もう!」
と思いながら、お気に召すまま、お付き合いしました。
「有り難うございました!」
もう、気が済んだのか、彼女らは明るく笑って、私を放免してくれました。70過ぎの爺さんには刺激的な、人生で初めての60秒を体験しました。そうやって、いろんな先生方との別れの時を惜しんでいるのかなとも思いました。
正直言って、マスクをしていたし、怒涛の1分間だったので、誰が誰だか、何が何やら、よく分かりませんでした。何となく、彼らの勢いのあるペースに乗せられて、その掌の上でもてあそばれた感無きにしもあらずでした。「あぶない刑事」ならぬ、「危ない老人」です。
目の前で夫の鼻の下を長くした(?)醜態を見せつけられたカミさんは、「よーやるわ!」とでも言いたげな目で、車のドアを開けた私をご覧になりました。
後日、私の授業担当クラスの生徒ではなかったことを知り、なんだかキツネにつままれたような気持ちです。おそらく、廊下ですれ違いに挨拶を交わすくらいの間柄だったはずです。それでも、あんなに素直に気持ちを表してくれたことが何だか嬉しく思われました。
学年かクラスか名前くらい聞いておくんだったなと思っても、後の祭りです。似顔絵も描けません。私は、刑事になれないことがよくわかりました。
※画像は、クリエイター・パーリーメイ | Purleymayさんの、「イギリス、ブリストルの写真店に飾ってあった写真」の1葉をかたじけなくしました。お礼を申し上げます。