No.497 危機を乗り越えていました
マーチングバンドで有名な某商業高校が、存亡の危機に立たされていることを知ったのは、私が40代も後半だった頃のことです。
彼らが練習の拠点としている市民公園近くの住民が、
「ブラスバンドの音がうるさくて迷惑だ!やめさせて欲しい」
と苦情を訴えて利用できなくしてしまったこと、部は大所帯なので大会出場のたびに楽器の輸送費や宿泊費がかさみ、年間の運営費は数百万単位に及んで活動費を圧迫していたこと、更に、学校側と外部指導者との軋轢も否定できないことなどが原因だったようです。
多かれ少なかれ、どの部活動にも共通する悩みがあるように思われます。ブラスバンド利用施設の近隣の住民には、高校生の文化活動を町ぐるみで応援し育てるという観点から、数時間を協力してやっていただきたいと願うのは無理なことなのでしょうか?ただ、一方的・感情的に生徒たちが可哀想だとばかり言えないようにも思います。住民の理解を得る話し合いの努力と場が学校側にも必要だったでしょうし、出場する大会を絞り込んで費用の圧縮を図るという生徒たち自身の厳しい姿勢も望まれるように思いました。
「大会で、勝たねば意味がない!」
と公然と話す指導者がいます。もちろん、お遊びやお達者クラブではないのですから、生徒自身も負けまいと必死になって練習をし、戦うのでしょう。どんな競技でも、頂点は1校か、1チームか、1個人に限られるのですから、その歓喜や悲哀を味わうのは必定です。
生徒たち若者が、数年間の文化活動や体育活動を通して仲間と苦楽を共にし、感涙と挫折を味わいながらも成長してゆく中から身につけたものは大きな人生の財産であり、将来の国づくりに直接関わってくれる彼らの生き方の支柱の一端を担っていると考えます。若者たちが育つ環境を作れるのは大人たちです。喜んで協力したいものです。
その後の経緯をつぶさには知りませんが、マーチングバンド部は、あの時の危機を乗り越えていました。昨年12月に、さいたまスーパーアリーナで行われた全国大会で、あの時の商業高校が銀賞受賞していたことを知りました。生徒たちは、諦めずに乗り越えていたのです。生徒と指導者と学校と保護者と地域という五位一体となった取り組みのたまものだろうとも思いました。
何だか、急に30年近く前の溜飲が下がったように思いました。