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No.1097 褌の紐を引き締めよ!

私撰「麗和万葉集」に載せたい短歌です。
 
1か月前に頂戴した「年賀欠礼上」に、懇意にしてくださったお婆ちゃんが、91歳で病没されたことを知りました。その娘さんに、筆の跡を偲んでいただこうと思い、お婆ちゃんから賜ったお手紙の写しをお送りしました。すると、先日、こんな返事がありました。
 
「懐かしい母の字に、すぐそばにいてくれる様な…
(中略)
八十九歳で短歌に目覚め、日々辞書を片手に"ことば" を探しておりました。"この年まで知らないことばが多すぎて、日々勉強、一生学びだわ" が、口ぐせのように話しておりました。
 大好きな母でした。女性としても、母としても心から尊敬もしておりました。
 ほんとうに淋しいです。
 
 さるすべり枝いっぱいに花つけて
  雀らもぐりぬ小花散らしぬ
 
 傘鉾の笛の音色に草笛で
  軍歌吹いてた兄を偲びぬ
 
山椿白磁の花器に活けたれば
 ひとしほ紅のいろまさりけり
 
母の詠んだ句でございます。亡き母を偲んでいただければ、きっと喜ぶと思います。
(以下略)」
 
お婆ちゃんのお孫さんを中津の弁論大会に連れて行ったご縁で知己となった間柄です。匂うようなお人柄があり、漂うような品格もあって、凛とした白髪の老女は、のっけから十年来の知り合いのような口調で接してくださり、五色のテープを投げたい程のファンになりました。数年前のお孫さんの結婚式場でのお話が最後となってしまいました。
 
それにしても89歳にして冷めやらぬ向上心、向学心には「さすが!」の思い一入です。ボーッと生きていては、チコちゃん以上に叱られそうです。褌の紐を引き締めねばなるまいと思った次第です。
 
さて、『昭和万葉集』(講談社、全20巻+別巻1冊、1979年)があり、「平成万葉集」(読売新聞社編、単行本、2009年)の発行がありました。いつの日か『令和万葉集』も多くの人々の心を刻んで上梓される時を迎えることでしょう。

私は、得手勝手至極の「麗和万葉集」と命名して、わが人生で出会った好きな歌を拾い集めています。五七五七七にこだわらず「韻文であればこれもよしあれもよし」という、編集者の性格が丸見えの甚だ緩~い撰歌基準です。

しかも、1度勅撰集に採られた歌でも、平気で再録するという節操のなさ。「無理が通れば道理引っ込む」世界を白日の下にさらす私撰集であります。ガハハ!

わが「麗和万葉集」に、
「傘鉾の笛の音色に草笛で軍歌吹いてた兄を偲びぬ」
のお婆ちゃんの1句を掲げさせていただくことにしました。麗しい妹さんの心として。


※画像は、クリエイター・三輪 夏生(みわ なつき)さんの、タイトル「そよそよ」の1葉をかたじけなくしました。どんなお手紙なのでしょう。ゆかしく思われます。