No.830 シビレル展開、シビレル言葉、シビレルWBC!
「マイアミの奇跡」とは、1996年(平成8年)のアトランタ五輪で生まれた言葉です。男子サッカー、グループリーグD組の第1戦で、日本チームの伊藤輝悦選手のシュートが決定的なゴールとなって、ブラジルチームを1-0で下した時の通称です。
昨日のWBC(世界野球連盟公認の世界一決定戦)準決勝の日本vsメキシコ戦では、27年の時を超えて、またしても「マイアミの奇跡」が世界中に放映されました。
22歳での三冠王は史上最年少、また、日本人最多記録の56本塁打を達成したヤクルトの不動の4番打者・村上宗隆選手は、WBCの一次リーグで不振にあえいでいました。「村上がブレーキ」「村上と心中」といった批判論や「若者に負担が大きすぎる」との擁護論に二分されました。
しかし、対メキシコ戦で、あわやホームランという値千金のセンターオーバー特大ヒットを放ち、逆転勝利に導いた一振りは、やはり大器であることを誰にも納得させました。チーム全員からの手荒い祝福は、彼やチームの長く重苦しい雰囲気を吹き飛ばしてくれたことを物語っているようでした。
栗山監督へのインタビュー、
「村上宗隆選手を最後まで信じた思いとは?」
に対して、
「最後に打ちましたけど、たぶん本人の中ではまだチームに迷惑をかけてるという感じしかないんじゃないか。あんなバッターではないので。ほんとに世界がびっくりするようなバッターだと、僕はこのWBCで証明したいとやってきたので、その彼を信じる気持ちは揺るぎないものがある。ただ一つきっかけを作るためにはいろんなことをしなければいけないので。彼の能力を引き出すことさえできればいいので。今日は良かったが、本人はくやしいんじゃないかなと思います。」
と説明していました。
自分のことを、ここまで見てくれる人、評価してくれる人、説得してくれる人に出逢える人は幸せです。そして、そう思ってくれるほどの結果を出せた村上選手の底力は本物です。
昨日の勝利インタビューでの栗山監督の第一声に、私は驚きと敬意を強く感じました。
Q.「今日の試合は、監督の目にどう映りましたか?」
A.「思った通り相手は素晴らしいチーム。なかなか突破口ができないで苦しんでいる中、勝ち負けは別として、『野球すげーな』という、やっているほうが感動した。」
野球人生をかけてきた61歳の監督をして、投打の噛み合いの妙味、試合の流れや展開を支配することの難しさ、沈滞し落胆したかと思えば歓喜の舞台が待っている野球という競技の持つ神秘性や奥深さに魅了されたと言わしめたのです。
両チームにとって凝縮された濃厚な時間と、悲喜こもごものドラマがちりばめられた永久保存版にしたい1試合でした。勝ちを誇るよりも、相手への敬意を込めた思いを「野球の魅力」を語ることで先ず述べた栗山監督という人物に大変心惹かれました。
2022年度の最優秀選手が日本の村上選手なら、アメリカはヤンキースのアーロン・ジャッジ選手でしょうが、彼には彼なりの判断がありました。
「私にとって大事な目標は、ヤンキースにWS(ワールドシリーズ)優勝のトロフィーを持ち帰ること。特に9年契約を結んだ今、ヤンキースが僕にとって最優先だ」
と語り、WBCへの出場を辞退しました。その筋の通し方も又立派です。
野球は1839年に、ニューヨークのクーパースタウンで、アブナー・ダブルディーという人によって始まったと言われています。その野球発祥の国アメリカに胸を借りる日本チームが、どんな戦いを挑むのか?どんな試合が繰り広げられ、舞台が用意されているのか?一投一打に目が離せません。
メキシコ戦の9回裏に2塁打を放った大谷選手が、吠えながら「次々にやってこい!」と両手で大きく手招きしました。あの時の闘志と勢いをもって、本気で決勝戦を楽しみ、最高の舞台で一途に野球を愛する少年のごとく胸をときめかせ、輝いてくれることを期待しています。
WBC決勝戦は今から2時間半後、TVのかぶりつきでトントントン(釘付け!)です。
※画像は、クリエイター・へんいちさんの、たいとる「これさえあれば、WBC優勝は間違いない」をかたじけなくしました。お礼を申し上げます。