No.992 二人で見つけたものは?
アメリカのヒューマンタッチの映画「最高の人生の見つけ方」(2007年)は、がんと向き合いながら、人生の真の喜びとは何かを考えさせる、痛快でいて示唆的な作品です。
実直な自動車整備工のカーター(モーガン・フリーマン)と、豪放磊落で自信家の実業家エドワード(ジャック・ニコルソン)は、ガン患者の病室で出会い、共に余命6か月と宣告されました。
ある日、カーターが書き留めていたメモ「棺桶リスト」をエドワードがゴミ箱から見つけます。そこには、死ぬまでにやりたいことがリストアップされていました。エドワードは、金に物を言わせて、その夢を一緒に叶えようと決心します。
○荘厳な景色を見る
○見ず知らずの人に親切にする
○泣くほど笑う
○マスタングの運転
○世界一の美女にキスをする
○入れ墨を掘る
○スカイダイビング
○ストーンヘンジを見る
○ローマを見る(行く)
○ピラミッドを見る
○タージマハルに行く
○香港に行く
二人は、住んでいた世界も性格も正反対でしたが、世界を股にかけた人生最後の冒険旅行が、そうして始まりました。私には羨ましいものもあれば、ご遠慮したいものもありました。望むものは何でも手に入れてきた男が、本当に欲しかったものとは何でしょう?そして、家族のために夢を諦め続けてきた男が、最後に見つけた幸せとは何だったのでしょう?
あの彼らが、何日間の冒険旅行をしたのかは分かりませんが、同じがん患者の女性で、7日間だけ時間の猶予を神様に申し出た宮本容子さんと言う人がいます。彼女の願いは、日常を見つめた、何とも家庭的で女性的で愛情深いものでした。
2017年11月、突然の入院となった容子さんでした。12月半ば、「家に帰ったら、何がしたい?」との夫の英司さんの問いかけに、ベッドに横になった容子さんが口を開きました。その言葉を入院生活の覚書用に枕元に置いてあったノートに英司さんが書き留めた、それが「七日間」の詩だったそうです。
そこに書かれていたのは、手作りの料理や裁縫、お片づけ、ドライブ、家族の誕生会、女子会、そして夫との静かな時間など、日常のごく当たり前のことばかりでした。それらは、「愛」が形になったように見えました。そして、当たり前がいかに素晴らしいことか、当たり前がいかに難しいことかを教えられます。当たり前とは、よく言われるように、本当は「奇跡の連続」なのかもしれません。
翌2018年(平成30年)1月19日、容子さんは他界しました(享年70)。容子さんの願いは天に届きませんでしたが、詩の最後の場面だけは叶えられたそうです。「最高の人生」を二人で見つけたのではなかろうかと思いました。
※画像は、クリエイター・りりまるさんの、タイトル「映画『最高の人生の見つけ方』」の1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。
ピンクのマーガレットの花言葉は「真実の愛」だそうです。ギリシャ神話に登場する女神アルテミスは「出産」「多産」の神で、そのアルテミスにマーガレットを捧げていたことから生まれた花言葉だと言われています。今日のテーマに相応しい花だと思いました。