見出し画像

No.1163 バキューン、バキューン!

彼女は、二丁拳銃の名手でした。

昨日、カミさんと確定申告に行ってきました。カミさんは、医療費と文化教室での講師料などが主な申告内容であり、私は学校の非常勤講師と文化教室での講師料、そして、各種年金や国民健康保険料の納付や医療費他を届け出ました。

例年なら、こちらが必要資料を持参すると、担当の係官が質問や確認をしながらパソコンの画面に打ち込んでくれていました。それこそ、目の前で魔法を見るように「サクサク」と画面が進んでゆきます。項目ごとにきちんと確認してくれますし、こちらも目を通します。鮮やかな手つきと無駄のない質問に惚れ惚れし、「出来る軍団」の一人に出会った印象が大でした。

ところが、今年は違いました。確定申告案内に「スマホ持参のこと」の注意書きがありました。会場で、私とカミさんの二人分を一緒にやってもらいたいとお願いすると、若い女性のところに案内されました。ところが、肝心の打ち込むパソコンが作業台にありません。
「では、ご自分のスマホの画面で、確定申告書を作成しましょう!」

彼女は、二人のスマートフォンの確定申告書のページを立ち上げさせると、一つずつ説明しながら交互に入力確認し始めました。導かれながら、全て自分で入力する作業は初めてです。経験を通して慣れさせて、将来的にこのやり方を浸透させたいという狙いがあるようです。

その若い女性の、老夫婦二人を相手に、取り扱うページや記入内容が異なるにもかかわらず、まあその案内・説明・補助の早いこと早いこと、カミさんに説明して作業させると、すぐにこちらを向いて次の画面の説明をし、入力を指示します。こちらの1画面が済むと、今度はカミさんの次の入力ページへといった具合です。彼女は左に私、右にカミさんを交互に見ながら的確に適切に入力指導してゆきます。

難しいのは、指示されたところへの入力は簡単なのですが、それ以外の記入欄が該当するのかしないのか、これはハイなのかイイエなのか、次ページに行けるのかいけないのか、わからないままに淡々と作業が進んでゆくことです。「言われるまま」の自分が歯がゆい。
「スマホで自己申告。簡単です!」
の謳い文句なのですが、こちらの頭が固いのか、「簡単」は「難しい」としか読めません。

我々は、数字を打ち込むのも文字を打ち込むのも慎重になり、彼女のイライラは溜まるばかりだったと思いますが、老人を思い遣り、いきなり振られたジョークにも笑顔を忘れない「心優しき確定申告の女性パイロット」いや、「早打ち二丁拳銃の使い手」でした。彼女の持つスマホ画面をなぞる特殊なペンが、老人を支え導く杖のように感じました。「やった感、やれた感」より「やらされて何とか成し遂げられた感」の方が強く心に残りました。

バキューン、バキューン!
二丁拳銃の名手よ、お世話になりました!


※画像は、クリエイター・マヨコンヌ🍒さんの、タイトル「すごい節税情報までギチギチに詰まった『史上最高に簡単すぎる青色申告の入力テクニック』を見つけたわ」の1葉をかたじけなくしました。確定申告者の心情としてよくわかる1枚です。お礼を申し上げます。