見出し画像

No.1233 大人と子供の十七音

大分県には、全国の大人や子どもの心の風景を望める五七五の大会があります。
 
父親が宇佐市出身というゆかりの作家・横光利一(1898年~1947年)の生誕100年を記念して、1999年(平成11)年から開催している「横光利一俳句大会」は、今年で第26回目を迎えます。
 
横光利一は、1898年(明治31年)3月17日に、父・梅次郎(大分県宇佐市出身)と母・こぎく(三重県伊賀市出身)の長男として福島県北会津郡東山村で生まれました。土木関係の仕事に就いていた梅次郎は、夫婦で東山温泉に滞在していました。それ以後、一家は千葉、東京、山梨、三重、広島、滋賀などを転々としたと言われます。
 
私の手元に、在職中、数年にわたって生徒作品を応募し続けた「横光利一俳句大会」の「入賞作品集」数冊(2009年、2011年、2012年、2013年)があります。特選十句の中から横光利一俳句賞・大分県知事賞・宇佐市長賞をそれぞれご紹介したいと思います。心に効く一服の清涼剤のような歌の世界を味わってみてください。
 
2009年(平成21年)「第11回俳句大会」…応募総数8,743首
選者:立松和平氏、倉田紘文氏
一般の部
 横光利一俳句賞
「生涯の夢の点滅秋蛍」
(沖縄県、女性)
 
 大分県知事賞
「みほとけの指の先より秋のこゑ」
(福岡県、女性)
 
 宇佐市長賞
「ひぐらしを鎮め一番星の出づ」
(大分県、男性)
 
中学生以下の部
 横光利一俳句賞
「虹をみて心の中も晴れだした」
(大分県、小6、男子)
 
 大分県知事賞
「夏のくも生まれこきょうは海なんだ」
(岩手県、小2、女子)
 
 宇佐市長賞
「タンポポは春の合図の司令官」
(大分県、小6、男子)
 
 
2011年(平成23年)「第13回俳句大会」…応募総数7,131首
選者:村上 護氏、倉田紘文氏
一般の部
 横光利一俳句賞
「少年の利一も越へし雪解川」
(三重県、男性)
 
 大分県知事賞
「大いなる風のてのひら揚雲雀」
(静岡県、女性)
 
 宇佐市長賞
「新涼の朱の大鳥居くぐりけり」
(大分県、女性)
 
中学生以下の部
 横光利一俳句賞
「被災地に願いを込めて流れ星」
(滋賀県、中3、女子)
 
 大分県知事賞
「ほうせんかいろんな色のパラシュート」
(大分県、小5、女子)
 
 宇佐市長賞
「ばあちゃんの竹の子届く里の秋」
(埼玉県、中1、女子)
 
 
2012年(平成24年)「第14回俳句大会」…応募総数6,701首
選者:村上 護氏、倉田紘文氏
一般の部
 横光利一俳句賞
「神託の杜に拾ふ落し文」
(山口県、女性)
 
 大分県知事賞
「遺されし文の親しき利一の忌」
(大分県、男性)
 
 宇佐市長賞
「小流れの石に影置く秋の蝶」
(大分県、男性)
 
中学生以下の部
 横光利一俳句賞
「にゅうどうぐもふたばのようにつよそうだ」
(大分県、小1、女子)
※横綱双葉山は、郷土の宇佐市出身の力士です。
 
 大分県知事賞
「のど元を歌って通る氷水」
(大分県、小5、男子)
 
 宇佐市長賞
「秋の蚊の忍者みたいにしのび寄る」
(中津市、中3、女子)
 
 
2013年(平成25年)「第15回俳句大会」…応募総数8,876首
選者:倉田紘文氏
一般の部
 横光利一俳句賞
「八方の風の音聴く立葵」
(韓国、男性)
 
 大分県知事賞
「余生尚楽しむ一書利一の忌」
(大分県、女性)
 
 宇佐市長賞
「冬囲いしながら冬に囲まれり」
(北海道、男性)
 
中学生以下の部
 横光利一俳句賞
「じいちゃんの笑顔が見えたぼんおどり」
(大分県、小5、女子)
 
 大分県知事賞
「鳥帰る空描くための青絵の具」
(福岡県、中1、女子)
 
 宇佐市長賞
「ホウセンカ指の先から種とんだ」
(大分県、小3、男子)
 
特に、2013年(平成25年)の一般の部の横光利一俳句賞、
「八方の風の音聴く立葵」
(韓国、男性)
には、どの声にも耳を傾け大事にする姿が比喩的に歌われているようで、とても共感しました。難しいことですが、その姿勢を忘れないでいたいと思いました。
 
春が終わります。
「春惜しむ人や榎にかくれけり」
 与謝蕪村(1716年~1784年)


※画像は、クリエイター・柘榴❣️さんの、「散策中に遭遇したホウセンカをスマホカメラで撮りました。」という1葉をかたじけなくしました。受賞作にもホウセンカが詠まれていますね。お礼申し上げます。