No.1438 協働・共同・大感動!
いきなり脳裏を駆け巡る歌に出合ったのは、昨日の午後の事でした。
11月30日(土)、13:00からの「超密着 世界の凄ワザキング 南米ペルー巨大つり橋」(NHKBS初回10月5日・再放送)を観ました。ケスワチャカ(Q'eswachaka)とは、ペルー南部のクスコでアプリマク川にかかる吊り橋のことで、インカ帝国時代から500年以上かけて先住民が架け替えてきた橋です。その橋の架け替え作業に密着した映像でした。
渓谷をつなぐ巨大なつり橋は、アンデス山脈の奥地の村の住民数千人が総出で架け替えるのが伝統の行事です。長い草を刈り取り、石で叩いて柔らかくし水を含ませてから縄状に綯います。1家族で100m近く綯わなければなりません。それらを繋ぎ、更に大繩に編み、対岸に引き渡し、ついに3日がかりで大つり橋を完成させます。
その間、一切の機械を使わず、全て人々の手作業で行います。天空での命綱無しの草の縄で作った巨大なつり橋は、呪術師たちの祈りの中、トウモロコシで作った酒「チチャ」の力も借りながら、男たち全員で協力し合って成し遂げました。その雄叫びが、峡谷に木霊しました。観ていた私もブルブルっと来る感動がありました。
村と対岸の世界を結ぶこの大つり橋は、インカの魂の宿る村人みんなの橋でした。命がけと言って良いその伝統行事は、500年も続く原始的方法ですが、そこにみんなでやり遂げる一体感と達成感がありました。幾つもの犠牲の上に成り立っており、個人主義の許されない共同作業なのでしょう。しかし、それだから出来上がったつり橋は、偉容でした。
私は、雄叫びを聞いた瞬間に思い出した歌がありました。
♪~
橋を作ったのはこの俺だ
道路を作ったのもこの俺だ
強いこの腕とこの体で
この国を作ったのは俺達だ
昔、昔の俺達の事 暗い森をきり開き
畑を耕し家を建てて この国をつくったのは俺達だ
橋を作ったのはこの俺だ
道路を作ったのもこの俺だ
強いこの腕とこの体で
この国を作ったのは俺達だ
(以下、略)
原曲は米国のハイテンポのカントリー曲でトム・パクストンの歌う「I m the Man that Built the Bridges」(1962年)です。「橋を作ったのはこの俺だ」と訳詞して歌ったのは、1941年(昭和16年)生まれのフォークシンガー高石ともやさんでしたが、今年8月に82歳で病のために不帰の客となりました。
1971年(昭和46年)リリースの「高石ともや-フォークアルバム第1集」(レーベル社:日本ビクター)の中に「橋を作ったのはこの俺だ」の曲もありますから、大学生だった1975年(昭和50年)ごろに、歌声喫茶の「どん底」(新宿3丁目)でこの歌を歌った記憶は間違いなさそうです。
ロシアの作家ゴーリキィの戯曲に由来する「どん底」は、1951年(昭和26年)に創業し、歌声酒場および歌声喫茶として知られましたが、1988年(昭和63年)に歌声喫茶の看板は下ろし、普通の酒場として営業するようになったそうです。
トップ画像は、私の持っている「どん底」の歌本で、1975年に友人たちと店を訪れた時に配布されたか購入したものです。そのP174の上段に「橋を作ったのはこの俺だ」が載せられています。まさに、懐かしい青春の1ページでした。