No.1395 大きな景色を観ました!
10月17日に幽明境を異にされた西田敏行さんは、8日に東京・六本木のテレビ朝日で行われた「劇場版ドクターX」の完成報告会見で、こんなことを言ったそうです。
「わりと役者をやっていていろんな役をいただくわけですけれど、蛭間重勝という役は好きな役のベスト5に入るんですよね。」
コメディーからシリアスまで、時には強面のやくざな役柄まで自在に振れ幅を広げて行った抽斗の多い役者でした。役者にとっては、そのどれもが思い入れの強い一期一会の作品であって、自分にとってNo1を演じ続けてきたのだろうと思います。
それでも、西田さんが言ったという「ベスト5」が本当にあるのだとしたら、「ドクターX」での院長代理・蛭間重勝役以外のベスト4は何だったのかなと思ったりもします。私が見覚えのある作品に限っても、
○「西遊記」(1978年~1980年)の猪八戒役。ちなみに、この時の三蔵法師役は夏目雅子さん、孫悟空役は堺正章さん、沙悟浄役は岸部シローさんでしたね。この時、西田さんは30~31歳だったでしょうか?
○「池中玄太80キロ」(1980年)でのカメラマン・池中玄太役。
○「おんな太閤記」(1981年)での豊臣秀吉役。「おかか」(妻のねね)は、佐久間良子さんでした。
○「翔ぶが如く」(1990年)での西郷隆盛役。風貌と存在感が似合っていたような。
○「学校」(1993年~2000年)での黒井先生役。第17回日本アカデミー賞(1994年)で最優秀主演男優賞に輝いた作品です。夜間中学の黒井先生が黒板に書いた「夕日」(大関松三郎)という詩にも、大いに感動しました。
○「八重の桜」(2013年)での会津藩家老・西郷頼母(たのも)役。会津藩士の子どもたちの教え「什の掟」の「ならぬことはならぬものです」は、強く心に残っています。福島出身の西田さんの郷里への恩返しの作品です。
○「釣りバカ日誌」(1988年~2009年)の「浜ちゃん」こと浜崎伝助役。
などがあり、とても絞り込めません。
ただ、「寅さん」と言えば渥美清主演の「男はつらいよ」です。「浜ちゃん」と言えば西田敏行主演の「釣りバカ日誌」ですから代表作の一つとして不動のものでしょう。作品を見た人々が思い思いの4つを想像することで、西田さんは目を細めてくれるのでしょう。
そう言えば、「もしもピアノは弾けたなら」(1981年)の名曲も残しましたし、ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」(1994年)で森繁久彌さんを継いで主役テヴィエ役を演じられたことも忘れられません。また、忘れられないと言えば、「探偵!ナイトスクープ」2代目局長となった人懐こい西田さんのハンカチ必至の涙もろい司会もそうです。思えば、幾つもの顔の人生を見せ演じた希有な役者さんでした。
「お迎えは何時でも良いが今日は嫌」
第13回「シルバー川柳」(2013年9月)のペンネーム千両さん(神奈川県・女性・84歳)の入選句です。我々老人の合言葉のような句だと思います。生きにくい世の中ではあっても、何とか生きようと頑張っています。2代目局長も同じだったでしょう。
来年は喜寿を迎えるはずだった西田敏行さんは、明日の予定、来月の予定、来年の予定を頭に巡らせながら生活しておられたのではなかったかと想像します。思いもかけない訃報に接し、幾つもの大きな景色を見せてくれた西田敏行さんに心から哀悼の意をささげます。
※画像は、クリエイター・ちびひめさんの「西田敏行さん」の1葉をかたじけなくしました。彼のお人柄がにじむようなタッチの絵に「ほ」です。お礼申し上げます。