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No.1420 おそれ多くも生きています

昨日、午後7時からの「世界ふれあい街歩き 南部の歴史とおもてなし チャールストン/アメリカ」(NHKBS 再放送)を観ました。滝藤賢一さんと平野ノラさんの軽快でノリノリなナレーションのお陰で、すっかり旅の同伴者の気分です。私には、2つの印象的な場面がありました。
 
チャールストンは、アメリカ東海岸南部にある港町で、人口は約15万(2020年時点)ほどです。ヤシの木々のある港町には、3千もの歴史的建造物が大事に残され、時間空間を超越したような街並みです。人々は、観光客や訪問者をフレンドリーに迎えてくれるお人柄だと教えられました。
 
このチャールストンは、17世紀後半にイギリスが築いた港町だそうです。ヨーロッパや西アフリカ、カリブ海諸島との交易が盛んに行われ、アメリカ建国の頃には「南部で最も輝かしい街」と称されるほどだったと番組で紹介していました。
 
しかし繁栄の裏には、奴隷売買の暗黒の歴史があり、アフリカから連れて来られた奴隷の4割が、チャールストンを通ってアメリカ各地へ送られたそうです。南北戦争後の1865年、奴隷制度が廃止されて街は衰退しますが、市民らによる街並み保全のお陰で歴史的建造物が守られ続けているといいます。
 
印象に残った1つ目は、街の「ガラ文化のゴスペル」の場面でのことです。
楽しげな音楽に引き寄せられたレストランで出会ったのは、西アフリカからチャールストン一帯に伝わったというガラ族のガラ文化のゴスペルを歌うグループです。メンバーの人種はさまざまです。
「皆さん仲が良いですね。」
とナレーターの滝藤さんが声を掛けると、
「みんな神の子よ!」
と大柄な黒人女性が笑顔で答えました。もうドッキリでした。この人々は、こんな私でも「神の子」と見てくれるのだろうなと思ったら、恐れ多いというか、かたじけなくもというか、とても嬉しい気持ちになりました。

日本では、つい先ごろ衆院が解散され総選挙が行われました。その後の、与野党内の個人的な思惑や権力の構図による見苦しい振る舞いを見ると「神の子」というよりも「人の子」なるがゆえの言動のように思いました。貧しくても、心のスケールが違います。
 
印象に残った2つ目のシーンは、街の「修繕の職人さん」のお話でした。
歴史的建造物の修繕を45年間行ってきた職人さんの家の中には数百年前の工具のコレクションがずらりと並んでいて壮観でした。天井に届きそうなくらいに長くて立派な鋸を見せてくれましたが、昔の奴隷たちの中に熟練の工具作りの職人さんが多くいて、当時の街の経済や文化の発展に大きな影響を与えていたことが最近分かってきたと教えてくれました。黒人たちは、苦役の労働者ばかりではなかったのですね。そのことを初めて知りました。
 
『ルーツ』(Roots)を覚えていらっしゃいますか?ご覧になりましたか?
1977年(昭和52年)、アフリカ系アメリカ人作家のアレックス・ヘイリー原作の小説をテレビドラマ化したアメリカの作品です。西アフリカのガンビアで生まれた黒人の少年クンタ・キンテ(たぶん、一生忘れない名前です)を始めとする親子三代の黒人奴隷の物語を描いています。
 
アメリカの歴史上、暗黒時代と称される黒人奴隷の問題を真正面から描き、社会現象と言われるような大反響を巻き起こした作品です。アメリカABC放送で1977年1月に放送された時の平均視聴率は、驚きの44.9%だったそうです。日本では、早くも同年10月に放映されましたが、これも20%を超える高視聴率でした。最終回は28.6%が記録されていました。当時24歳だった私も、その数字の構成員でした。
 
そして、クンタ・キンテの黒人奴隷の物語にとどまらず、我々の祖先である「ルーツ」について、多くの人々が意識するきっかけを作ってくれた作品だったようにも思います。
 
「ファミリーヒストリー」は2008年(平成20年)から始まったドキュメンタリー番組です。私は、アメリカのテレビドラマ「ルーツ」の影響で生まれた番組かと思っていましたが、そうではありませんでした。

番組立ち上げのきっかけとなったのは、NHKのプロデューサー氏の義父さまが、亡くなる直前に自身の生い立ちを話し始めたことに心を動かされ、(芸能人をきっかけに)市井の人物の生活史・家族史をたどることが面白いのではないかとの着想から企画されたものだったということを知りました。大好きな番組ですが、こちらは、ヘーボタンでした!


※画像は、クリエイター・SUGIHARAさんの「戦う:みんなのフォトギャラリー」の1葉をかたじけなくしました。キーワードの「モハメドあり」にちょっと笑いも。あり難うございました。