見出し画像

No.1487 令和に望む

今から四半世紀も昔の1月中旬のお話です。寒さが厳しくなっていました。
「ベランダでメジロが死んでました!」
朝礼で教室に入ると、待ちかねたように生徒がご注進に及び、ハンカチに包んで持ってきました。

既に死後硬直しており、目は閉じられ、冷たくなっていました。ベンダの周りに抜け落ちた毛もなく、また外傷もなく、目を閉じていたので、恐らく自然死だったのでしょう。エサが取れずに餓死したか、病気にかかって気力・体力衰えて絶命したか、寒さにやられたか、そう判断しました。

偶然とはいえ、最期となる死に場所をクラスのベランダに選んだのだから、手厚く葬ってやろうとクラスに呼びかけました。みんなのホッとした表情が印象的でした。これが人間で、人生に行き倒れたらと思うと、なんだか寒々とした思いになりました。

あの日から26年目の今年2025年です。去年のデータですが、

 2024年1〜3月に一人暮らしの自宅で亡くなった65歳以上の高齢者が約1万7千人確認されたことが14日、警察庁への取材で分かった。数値を年間ベースに単純に置き換えると、約6万8千人の高齢者が独居状態で死亡していると推計される。

日本経済新聞 2024年5月14日

という記事を見つけ大いに驚きました。今や100歳人口は9万人を優に超えています。「人生100年時代」を標榜するその一方で、高齢者の独居死が、毎年7万人前後もいたのです。

誰にも看取られずに逝かざるを得ない状況は、一人暮らしの人に限りませんが、多くの高齢者が独りで亡くなられているという厳とした事実は、ことの重大さ深刻さを物語っています。昭和の時代を牽引し創造してきた人々が、平成と言う時代を生み、令和を育んできたのに、今やその方々が、産み育てた時代から置き去りにされ、忘れられているのです。

私の団地のご近所にMさんという93歳のおばあちゃんがいます。毎朝、日の出と争うように4kmほどの散歩に出かけます。うかうかしていると追い越されるほどの速さです。とにかく「明るい」。よく「しゃべる」。何でも苦にせず、すぐに腰軽く「行動に移す」。この豪華三点セットが、Mさんの「寿」の秘訣かなと思ったりしています。そうはいうものの、身体が思うように動かなくなる、病を得る、気が塞ぎがちになることも避けられません。

「令和」とは、『万葉集』を出典としており、
「初春の令月(れいげつ)にして 気淑(きよ)く風和(やわら)ぎ...」
という文から採られたもので、
「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つという願いが込められている」
と当時の首相は説明しました。しかし、それだけではなく、
「一人ひとりが大事にされる、一人ひとりが自由にものが言える」
という意味も込められているという研究者(明治大学教授・山崎健司氏)の発言(Meiji.net 2019年7月31日)もありました。
 
誰も歳をとります。「一人ひとりが大事にされる令和」であってほしいと強く望みます。


※画像は、クリエイター・たまとめ🔮の部屋さんの、タイトル「年末にしたカードリーディング🔮から」の1葉をかたじけなくしました。「艷やかな姿の蝋梅」の説明も添えられていました。きっと、メジロも親しくした花でしょう。お礼を申し上げます。