互いが心の杖となりながら生きた老後でしたが、1945年(昭和20年)に結婚した奥さんの喜代さんは、40年後の1985年(昭和60年)、65歳で亡くなりました。そして、黒澤明は、1998年(平成10年)に88歳で病没しました。
映画衣装デザイナーとして活躍中の娘の黒澤和子さんが「力を合わせて生きた二人」のタイトルでこの文章を書いたのは、2011年(平成23年)のことで、父の没後13年、母の死後26年目のことでした。
「五十年かかって鍋と蓋が合う」
第9回「シルバー川柳」2009年の入賞句(秋田県、76歳、男性)ですが、金婚を迎えることの難しさゆえに、今二人が、こうしてあることの幸せを見つめ、感じていたいと思います。
「わしとお前は羽織の紐よ かたく結んで胸に置く」
作者未詳の「都都逸」(どどいつ)です。江戸時代末期から明治時代ごろの作かなと思っていますが、粋で真摯な老夫婦の世界が思われます。夫婦の固い絆がうかがわれる好きな句です。
※画像は、クリエイター・Tome館長さんの「横浜 人形の家」の操り人形の老夫婦の1葉です。「仲良きことは美しき哉」を思わせる二人の姿にゾッコンです。お礼申し上げます。