No.223 ああ、勘違い…。
大学に入学したのは半世紀近くも前のことです。国語学の助教授だったY先生が、我々のクラス担任でした。新入生ガイダンスの時に、開口一番
「私は、ハワイ生まれでして…」
と自己紹介されました。アメリカのハワイ州のことかと思いきや、鳥取県羽合(はわい)町の事でした。いきなり教室中に爆笑が起き、緊張が解けたのを懐かしく想い出します。その羽合町は新設合併(2004年10月)により「湯梨浜町」(羽合町・東郷町・泊村)と改名し、Y先生の冗談は、時代の趨勢の陰に姿を消すことになりました。
ある日の早朝、テレビのBSを点けたら、
「シリアの海は昆布が豊かに育ち、それを餌にするウニや鮑が漁師達に恵みをもたらしています。」
と、おそらく地震の時でも冷静沈着に語りそうな落ち着いた男性アナウンサーのナレーションで、シリアの海中の様子が映像で流れました。
今も難民問題に揺れるシリアですが、きれいな海でした。私の気分はもう地中海です。しかし、番組が進むうちに日本風の海岸端の家々が映り始めました。へっ??
そこは、青森県下北郡東通村の尻屋崎というところでした。アイヌ語(sir-ya )で、絶壁や岸をあらわすそうです。周囲の海上は岩礁が多く、夏は霧、冬は暴風雪となることが多いために海難事故が絶えなかったとは、百科事典の説明にありました。南西約2kmに尻屋の集落があり、磯漁が行われたということですが、まさにその風景だったのです。
地中海にも面した中東のシリアの語源は「アッシリア」からの転訛かともいわれていますが不明です。:そのシリアではなく、青森のシリヤ!豊かな海の、ああ勘違い…でした。