在職中に作文課題を出すことがありました。
これは、30年近くも前に課した「肉親との絆」という題に応えた高校1年生の女子の作文です。自分という者をとらえようと、ある出来事から掘り起こして自己を観照しています。その精神のありようにひどく心を打たれた作品です。サブタイトルは「無題」でした。ご一読ください。
「肉親との絆」がハッキリとは示されませんが、失った人への愛惜と後悔にも似た癒されぬ思いが、故郷の自然と二重写しになって複雑な心情を吐露しています。そんな中、越境して学びながらの下宿生活で、愛でる植物の生長に安息と癒しを覚えながら前向きに生きようとする彼女の心と言葉が行間ににじみ出て、読む者の心をしみじみと打つのです。
文中の、
「なれし故郷を放たれて、夢に楽土を求めたり」
とは、ドイツのロマン派音楽を代表する作曲家・シューマン(1810年~1856年)の歌曲『流浪の民』の一節です。日本語の歌詞は、石倉小三郎(1881年~1965年)による訳詩だそうです。原詩はドイツ語で「der Nil(ニール)」、つまり「ナイル川」のことだそうです。私は、教え子のこの文章を読むまで、『流浪の民』の詩を知りませんでした。その石倉小三郎の『流浪の民』の訳詞も併せて紹介して終わりたいと思います。
※画像は、クリエイター・すえぽん🍩旅と援農とドーナツさんの、タイトル「楽しんでブログを書けるのかが勝負。」の1葉をかたじけなくしました。「佐伯市の観光地」の説明がありました。お礼を申し上げます。