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No.1408 キュッ、キュッ、キュッ!

お手(てて)つないで 野道を行けば
みんな可愛い 小鳥になって
唄をうたへば 靴が鳴る
晴れたみ空に 靴が鳴る

花をつんでは お頭(つむ)がさせば
みんな可愛い うさぎになって
はねて踊れば 靴が鳴る
晴れたみ空に 靴が鳴る

童謡『靴が鳴る』(作詞:清水かつら 作曲:弘田龍太郎)は、文部省唱歌です。1919年(大正8年)に刊行された雑誌『少女号』(小学新報社、11月号)が初出だそうですから、今年で105歳です。2007年(平成19年)に「日本の歌百選」にも選ばれています。
 
一昨日、3年前に購入した我が愛用のコールマンのメンズメッシュシューズ(夏用)の左側が「キュッ、キュッ」と鳴るようになりました。雨の中でも平気で履いていたのは、こんな足にもフィットしてくれる「ういヤツ」なので、オールシーズンで使っていました。いつの間にか靴底が擦り切れたか穴が開いたかで水が入り、音で知らせてくれたのです。

買い物に歩いて出かけたのでしたが、それにしても、左足を踏み出すたびに「キュッ、キュッ」と鳴るので、60年以上ぶりに童謡「靴が鳴る」を口ずさんでしまいました。ちょっぴり怪しい爺さんだったかも知れませんが、2番までしっかり覚えていました。なかなか無い体験に、かなり悦に入ってしまいました。
 
作詞家の清水かつら(1898年~1951年)さんは「日本童謡全集」(日本蓄音器商会刊)の中で、次のように述べているそうです。

 「靴が鳴る」は、仲よく皆さんが野あそびにゆく、可愛い姿をうたったものですが、それはまた昔の、私の姿でもあります。東京に生まれて育った私にも、野あそびの楽しみはありました。私の子供の頃は、東京もまだずっとせまく、郊外の近かったことが、なつかしく思い出されます。小さな足でもあるいてゆける町はずれには、小川がさらさらながれて、茅ぶきのお百姓家の、そこはもう田や畑が、ひろびろと眺められました。水車の唄もきかれました。そのけしきがうれしく、私たちはみんなで、よくあそびにいったものです。そうです、「靴が鳴る」の歌そのままに、お手々つないで。
 手をつなげば、私たちはまた、れんげの花にひらいて、お月さまの唄にまるく、いつでも、どこででも、仲よくあそんだものでした。その手つなぎの手のぬくみは、うれしく、今もなお私の手に感じられて、遠く近く別れたお友だちのことが、なつかしくおもわれます。お手々つないで。それはまた、心をつなぐことであります。力をあわせることでもあります。
 「靴が鳴る」が、大正童謡を代表するほどの名曲になったのも、弘田先生との手つなぎがよく、この童謡を生かしたのだと、私は信じます。これからもなお私は、この心で作曲の諸先生とよい童謡をたくさんに、うたいあげたいと思います。
 皆さんも、お手々つないで行きましょう。皆さんが足なみそろえてゆく道は明るく、コドモニッポンの空は、いつも青空です。さあ、お手々つないで進みましょう。きょうも、仲よくあしたも。

「靴が鳴る」に謎はない-童謡詩人・清水かつらのページより

その文章を読んで、お手(てて)繋いで歩いてくれる人はいないかなと団地内を散策しましたが、犬の鳴き声はすれども、人の姿はありませんでした。ちょっと惜しいような、晴れたみ空の午後でした。


※画像は、沖縄で食べて走って飲んで子育てしてバスケするライター・照屋勇人さんの「秋の公園で撮影した紅葉」の1葉をかたじけなくしました。紅葉と対照的な深い青空が印象的です。お礼を申し上げます。