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No.1403 身近な神様

数週間ぶりになりますが、検診のためにくだんの病院に行きました。「人品卑しからぬ紳士」の「人品卑しかった方」に出逢ったあの病院です。9時ごろ訪れましたが、受付番号は194番でした。あちゃー!
 
例によって患者さんが多く、待機ロビーにたくさんある長椅子は満席状態です。立ったまま待ち続ける患者さんが何人もいます。私は、待機場所から少し離れたトイレ前の通路に置かれた長椅子の前で尿検査と血液検査のために名前の呼ばれるのを待っていました。
 
何分か経ったころ、車いすに乗った老女が、
「すまんなー、あんたたちにめいわくんじょーをかけち!」
と後ろからゆっくりと押してくれる50代の女性に申し訳なさそうに語り掛けました。
「なん言いよんのお婆ちゃん。なーんも心配せんでいいんで!任しちょくれ!」
とその女性は答えました。
目の前を通り過ぎるお婆ちゃんの守り神を見たような気になりました。
 
こんどは、私の座っていた二脚の長椅子の一番端っこで、持参した本を読み続けていた若い女性が、急に立ち上がって私の隣に来て座り、また本を読み始めました。???杖を突きながら、座るところをキョロキョロ探しているお婆ちゃんに気付いたのでしょう。「ここに、どうぞ!」の一言もなく、老女が近くに来たのを機に、スーッとこちらに移動してきました。その自然さがカッコよくって、眼鏡をかけた色白の髪の長い若い女神さんの振る舞いに「ほ」です。
 
診察の後、学校に戻って数クラス分の中間考査のテストの答案用紙を受け取り、学校で採点を始めました。最後の生徒の答案の丸付けを終えてホッと一息。1枚添えられていた予備の解答用紙をめくったら、
「採点、おつかれ様でした。いつも声を掛けて頂き、ありがとうございます!毎日元気に頑張っています!これからも、よろしくおねがいします。」
と試験監督をしてくれた若いH先生からのコメントがありました。廊下ですれ違った時に声を掛けるだけの間柄ですが、問題用紙の冠(表書き)に問題作成者の名前を書く欄があり、それを見て、私宛に一言添えてくれたのでした。
 
アッと驚く粋な計らいに、親子以上も年の差がある若者から励まされたようで、感動至極でした。こんな身近なところにも、元気印の若い神様がいました。
 
「神は細部に宿る」とは、ドイツの近代建築家ミース・ファン・デル・ローエの名言だそうですが、「紙の細部にも宿る心」を感じた次第です。


※画像は、クリエイター・わたなべ - 渡辺 健一郎 // VOICE PHOTOGRAPH OFFICEさんの「カツラ」の1葉をかたじけなくしました。ハートが連なったような形は、その日の出来事を思わせました。お礼を申し上げます。