No.1125 幅を利かす?
昨日の日曜日は、午前中に重い雲がかかって北風の吹く肌寒い日でした。
それでも、運動不足を感じていたので、午前10時になったのを機に散歩に出かけました。近くのパチンコ&スロット店に車が吸い込まれていきます。後ろから自転車に乗って鼻歌まじりで通り過ぎた老女性(70代後半?)も、駐車場に自転車を置くと、そそくさと扉の中に入っていきました。一瞬、にぎやかな店内の音が漏れました。
私は賭けごとが苦手です。しかし、友人に誘われてパチンコをしたことがあります。30代だったと思います。300円ほど銀球と交換し、友人の決めた台で打ち始めました。当時はパチンコ台の真ん中に飛行機があり、うまく当たると両翼が90度に閉じたり開いたりして球を集めます。
その時、あっという間に当たってしまい、両翼が激しく開閉し始め、ガンガン球が集められ、受け口に溜まり始めました。私は、
「大変だぁ、機械が壊れた!」
と色を失いました。友人は、どこからか球を入れる箱を持ってきました。
「これに入れたらいいよ!」
もう、いつ終わるのか、早く止んでくれと祈るような気持でした。何とか騒ぎが収まり、どうしようかと思っていると、
「受付に持っていけ!」
との友人の御指示です。その通りにすると、なんと1本ずつ丁寧に専用のビニール袋に入ったボールペンを両手で握るほどくれました。
「こんなにボールペンをくれたよ。一生で使いきれるかな?」
と友人に冗談交じりに言うと、
「外にある建て小屋で、換金してもらっといで!」
とこともなげにのたまいます。
場所を探すと、小さなブースに小窓がついており、相手の顔も見えません。
黙ってボールペンの束を差し入れると、黙って紙幣数枚が差し出されました。
「ええっ!」
いわゆる「ビギナーズラック」というやつだったようです。そして、「柳の下にいつも泥鰌はいない」の教えを私が知るのに時間はかかりませんでした。
賭けごとが苦手な私は、オツムが固いらしく「決まりごと」が難しくて覚えられません。花札もマージャンも全くいけません。その上、私の名前を書いて「手元不如意」と読むほど正真正銘、まじりっけなし、血統書付きの貧乏人のこせがれです。大金を弄することもありません(いや、出来ません)。
あれは、田舎に住む母が亡くなる何年前だったか、
「お母さん、何かやりたいことはある?」
と聞いたら、
「1回でいいから、パチンコをやってみたいんじゃ。」
と言います。なんだ、そんなことかと500円分の球と交換して母にやってもらいました。
数回チンジャラと音がしましたが、ものの数分で球がなくなってしまいました。
「あー、スーッとした!」
母はそう言いました。
私の中では、そんな母の遺伝子が幅を利かせているようです。
※画像は、クリエイター・稲垣純也さんの、「パチンコの看板」の1葉をかたじけなくしました。「喧騒」と「悲喜」こもごもの非日常の世界に、丸い球やコインがいざないます。お礼申し上げます。