No.256 魅力倍増す?
或る日のインターネットの情報に、
「よく笑う人は、恋愛でも得をする」
という興味深い記事がありました。
米国カリフォルニア大学の心理学者が、某私立大学の卒業アルバムの中から笑顔で写っている人をチェックし、卒業後の30年間にわたって追跡調査をしたそうです。その結果、卒業アルバムに笑顔で写っている人ほど幸せな生活を送っていたというのです。もっとも「幸せ」とは、客観・主観のいずれもありますから、どんな根拠で「幸せな生活」だと認定したのか、気にはなるところです。
更に、彼らの通院歴もチェックしてみると、よく笑う人の方が健康を維持している傾向が強いことも判明しているとのことでした。
「顔の造作とは無関係で、笑顔という表情のみで抽出したデータなのがポイント」
と説明しているあたり、私などには説得力がありました。顔の造作は、自らの手ではいかんともしがたく…。
幼稚園児や小学生で、良く笑う子ほど「将来、大物になるぞ!」と大人たちに期待させるらしいのですが、心理学では「魅力バイアス」(バイアスとは「偏り」の意味だそうです)と呼ぶそうです。見た目が優れて好印象で、魅力的に感じるものは、他の能力も優秀だと勝手に思い込む傾向があるといいます。美男美女を見ると、知的で仕事ができ、運動神経もよく、将来は成功して幸せになるだろうと感じてしまいがちだらしく、笑顔の人にもそんな期待感が高まるということのようです。
確かに、ニコニコしていると心の余裕を感じますし、安心感や信頼度が高まるように思います。明るく話しかけられると、肩肘を張る事もなく、何か親近感さえ覚えます。笑顔の人には話しかけやすいし、気持ちが明るくも前向きにもなる気がします。「笑門来福」なども、この「魅力バイアス」を意味しているのかもしれません。まさに、「魅力倍増す」です。
『大地の子』第10部「冤罪」で、主人公の陸一心(上川隆也)は、訪日中の機密文書紛失の責任を問われ、内蒙古の製鉄所に左遷されてしまいます。その西蒙古鋼鉄公司の所長もまた、左遷人事によって希望を打ち砕かれた人物だったのか、世界中の不幸を一身に背負ったようなその表情は、今も忘れられません。眉間のしわ、そして鉄で閉ざされたような重い口、一切の表情をなくし、苦虫を一気に何匹も口の中に放り込んで噛みつぶしたような表情は、見ていても重苦しくなり近寄り難く、低体温の冷血な動物を思わせました。その人の心に、かすかな希望や暖かみを与えたのが、冤罪のために左遷されてきた陸一心の人柄と勤労態度でした。この所長ほど笑顔の意味を教えられた場面を私は知りません。
笑顔の効果、魅力バイアス(倍増す?)をお伴にしたいお年頃の私です。