㉚ 三国志と、自殺相談、自己破壊
昨日は久々に教え子たちとの飲み会でした。それぞれ中国人・日本人・韓国人だったので、僕はこの組み合わせを「三国志会談」といいます。昨日は僕を含めて3名でしたが、都内で頑張っています。
1年半ぶり?ということもあって会話は自然と盛り上がりました。結構楽しい飲み会でした。上野にある中国人のための「妥協のない本物の中華料理」だったので、中国旅行気分で楽しめました。
一人は大手中国企業、一人は日本の中堅会社(転職したばかり)でした。互いの会社内の人間関係、上司と部下の関係のあり方、出張の話などなど。話題豊富でした。中国の会社では夜中11時過ぎや休日にも上司が電話してくるというので、僕が「韓国と同じだね」と相槌を打つ、「以前いた中国系会社では、罰金制度もあった」という話などが色々。これがなかなか面白いですね。日本ならこうだ。中国はこうなんだよとか、韓国は中国と近いね!などなど結構多岐にわたる話で盛り上がりました。日本代表は転職評論家といってもいいほど転職を繰り返しています。当然、昨日も転職が話題となってました。職場としては大学しか経験のない僕には異世界の話でしたので興味津々でした。やはり三国志談義は楽しいですね。
三国志の日本代表との出会いは特別な出会いからでしたので少し紹介します。僕の勤務大学は地方の小さな公立大学でした。地方の大学に来る学生の層には特徴があると思います。高校まではある程度勉強ができる方だけど、私立大学にいくには経済事情がままならないような学生がほとんどだと思います。だからといって綿密に調査したわけではなく、あくまでも僕の経験上の話ですが、少し気になる点をお話します。
端的にいうと、僕の学生に「まともな学生」(家庭環境と財政的などの面で)は、残念ながら一人もいませんでした。全員、勉強はできる方だけど、父親が暴力的だったり、母親から虐待を受けたりなどの学生がほとんどです。細かくは書けませんが、殆どの場合、親が子どもをきつく押さえつけるタイプでした。また、ほとんどのぜみ生は女子です。僕が特に女子に好かれているというわけではなく、中流大学に女子が多いです。男子学生中、優秀なのは国立大学に、残念な学生は下級の大学に集まる傾向が強いです。僕の勤務大学には目算で70%〜80%くらいは女子と思います。
僕の部屋はなぜか「泣き部屋化」していました。授業内容が「人間を読む」ことに重みがおかれていたので、多分「この先生には相談できそう」と思われたかもしれませんと思うのでしょう。でも、僕の立場から想像してみてください。学生が泣きながら研究室に入ってくると、まず危険でしょう?先生が学生に手を出したかな?と疑わるかもしれないでしょう?動かない証拠を確保した!と喜ぶ勢力がいないともいえない?そんな状況じゃないですか!僕の研究室がちょうど曲がり角にあったので、通行人が多く、常に誰かが見ている状況に近かったですね。
でも、僕はそんなちっぽけな噂話に負けるようなか弱い人ではないと自負しています。自慢ではありませんが、すでに韓国での話ですが、結構騒ぎを立ててましたからいつの間にか戦う戦士^^!!小さな噂を掻き立てる連中は眼中にないですね。
それより、学生が泣きながら入ってくると僕の作業が途切れることもしばしばなので正直「またか!」と思いながらも、「あなたもなの?」と驚いてしまうことがおおいですね。
「あなたも?」というのは、学生の事例が一種の症例として定型化されているように見えるからです。「久々の普通の家庭の子が来てくれたか」と思っていたのに「あなたも?」というのが正直な感想でした。いつも明るく、勉強も好きでいつもニコニコしていたからとても魅力的な子と思っていた学生も「泣きながら入ってくる」わけです。驚くのも無理がないでしょう。まあ、総論的な話はこのくらいにしましょう。
三国志会の日本人学生との出会い異様な電話からでした。秋か冬の手前だったと思います。知らない学生から突然「電話」が来て、「1年生で今休学中の〇〇です」というです。そして「今東京にいます。休学中」といって、低い声でゆっくり「自殺したい。けれど最後に先生のアドバイスを聞いて決めたい」というじゃないですか。普通はびっくりするでしょうが、僕はこの程度の脅し(悩み?)では全く驚いたりしません。
なぜかというと、数多い事例の中のひとりに過ぎないからです。
「自殺したいというのになんで僕に電話したの?」と聞きましたら、「1年生の2学期に先生の講義を聞いて、聞いたことのない全く変わった話ばかりだったので、違う観点からアドバイスが聞けると思って・・・」といっていました。こういう話なら簡単に解決できます。
「君、講義が面白かったわけ?ならば、もう少し賢くなってから自殺すれば?」「自殺はいつでもできるじゃない?」「バカのままに死んだら悔しくないのか?」と連射しました。若者の自殺が社会問題となっている中、軽率には表現できませんが、これを知った上でもう少し書かせてほしいです。僕は僕の講義を聞いたことがある学生には「自殺するな」とはいわず、「賢くなってから!」「自ら考えるようになってから」といい聞かせます。なぜなら「あなたたちは生まれたばかりの新生児だから!」「大学は自己破壊の場なんだよ」「考えるとはこういうことだよ」「喜ぶために大学に来るんだよ」「鳥肌が立たなければそんな大学は捨てろ」と聞かせ、慣れてきたら「僕は韓国人だから変な話しかいわないんだよ!」「日本人先生と同じ話をするなら価値がないでしょう?雇う意味がないでしょう」といい聞かせます。
反語表現もよく使うほうですがまだ18〜21歳!!!人生で最も輝く時期になんで自殺を?と思うと心が痛みます。はもちろん痛いですが、この自殺衝動は「決して学生のせいではない」はずでしょう?社会が、あるいは家庭環境が!つまり、外部要素・外的要因が純心な学生をここまで追い詰めているからでしょう。
悩んでる学生に「勉強してから自殺してもいいのでは?」というのは「人は自分の精神の持ち主ではない」といったフロイトや数え切れないほどの哲学者たちが懸命にせっぱしてくれた、「私は他者である」というこの偉大な教えにちっとも触れることなく死を選んでしまうな」という意味です。だからまず勉強して、偉大なる知の世界を少しでも齧って、鳥肌が立つ経験を無数にしてから判断する。「考える力をつけて考える」というのが話のポイントですが、「考える力がないまま死を選ぶ」このすさまじい悪環境に僕は腹を立てるわけです。
三国志の日本人学生も例外ではないはずでした。「勉強してから・・」といってさらに、「たった1学期の3ヶ月半の講義でそこまで刺激があったというのであれば、(自分がまだ出会えなかった、夢にも思えなかった)素晴らしい世界があるかも知れないと思うのが普通ではないか?これを知らずに死ぬとこれこそ悔しくないか?」と言い聞かせ、次年度に復学して、僕の講義をすべて取るようにとアドバイスしました。
彼は僕のいう通り復学し勧める科目を受講し、3年時に僕のゼミに入ったのです。そして、調子に乗っていってしまいましょう!「この先生の授業は取る必要がない」「文学の授業は評判もいいし、素晴らしいから是非受講して!」とまでいいました。
今はもちろん絶好調です!自信に満ちています。昨日も飲み会は午後7時からでしたが、先に2時ころ会いました。僕にちょっとした用事があって、先に出てましたが対応をこの三国志の日本代表がやってくれてました。僕が場所を勘違いして新橋に降りてしまったのですが、彼が僕の用務先を事前に知らべてくれて、電話で尋ねてくれてました。隣で聞いているとその対応が実に的確だったので、相当訓練したね、素晴らしいと正直に褒めざるをえませんでした。 教え子(男子)は結局いってみれば『父という病』(岡田尊司)の犠牲者でした。この本で岡田さんは有名人の事例を中心に述べているので、もっと理論化した説明がほしいですが、父の暴力が三国志の日本代表を生んだのは間違いないでしょう。精神分析でいう父の殺害(破壊、乗り越え)には時間がかかります。後遺症がすぐ消えるわけがないでしょう?僕もしつこいので干渉し続けます。で、昨日も父親の話しを少し聞かせてもらいましたが安心しても良さそうな状況と思えました。
そして、僕の講義は記号学と構造主義の難しい内容を事例を中心に喋りますが「超難しい」と悪名が高いようです。学生が苦情を結構いいます。話のポイントをごく端的にいうと「考えることを考えさせる」ということをまず自覚させることから始めます。これがなかなか難儀です。なぜかというとすべての学生は「自分はすでにほぼ大人で、世の中の仕組みの大概はわかっているつもり」と思い切っているところをくざさないと始まらないので、これを潰す話から進めています。学生が「常識でしょう?」と信じ切っていたのが実は「全く非常識な先入観」だったことを気づかせることから始めなければならないわけです。教え込むわけではありません。教え込むのはできません。時間がかかりますが、身近な質問を浴びせながら一緒に考えるように仕掛けるのが僕の仕事です。
「つばがなんで汚い?」、「教室に女の子いるか?」(数十名いますが!^^)という話をするのですが内容について知りたい方はこのブログの「心の内鍵」を覗いていただきたいです。
つばがなんで汚いか?女?男?って誰?どこにいる?みたいな話をするからみんなたいへん戸惑うわけです。ですが、やがてみんな別人28号にのように変身してくれます。例の三国志の日本代表もこの話で結果的には自殺を止めたと僕は思っています。そして、授業の最後に種明かしを大胆にも無料公開します。「結局、あなたたちは私に騙されてたんだよ!」「考え方のツボが握られて逃げられなかったんだよ」と最後なので完全無料公開してしまいます。
激震が走ったかどうかはわかりません。最後だったから!!!
ごく普通の話をしているのに、学生たちは難しいと苦情をいいます。まるで韓国の今の暴徒のように苦情をいいます。「難しい!」「こんな当たり前の話、なんの意味がいうか!」中には「これが授業か」と完全否定する反乱軍のような学生も年に一人くらいは必ずいます。
苦情と対応、これを大阪の漫才風に紹介しましょう。
「内容が難しいのでもっとわかりやすく簡単に!」⇒⇒「簡単な話を聞くために金を払ってるの?」「分かりやすい話になんでお金払う?」
「言葉が難しい」⇒⇒「辞書があるじゃない?何のために辞書がある?」
「先生の話が早すぎるからついていけない⇒⇒携帯で音声録画もできるでしょう?」(**録画も録音も自由にさせてますのに、文句いうのが天才的!)
「テストが難しい」⇒⇒テスト前にすべての問題を事前に教えているのじゃない?ノート見てテスト受けてもいいというじゃない」
と僕もなかなかしぶといです。口がうるさい学生がいたら、「おい!君と僕で大学祭に師弟組で漫才に出よう」といいます。だから、嫌われるわけです。
僕は韓国の悪臭漂う中、戦っている戦士(^^)なので、更にハンマパンチを浴びせます。学生からの反論を押さえつける決定打を束してしまいます。「おい!学生と先生の最もいい関係がなにかわかる?」と聞きます。大概の学生は模範的な返事をしようと頭を抱えます。が、僕がそんな模範的な教員であるはずがないのです。
「先生と学生の最もいい関係はな、SMの関係だよ。先生がいじめて、学生はひたすら耐えて喜ぶ関係!これをSMといわず何という?ハハハ」。
でも、僕の漫才に笑ってくれる人は正直いませんでした。苦笑いが精一杯でしょう。もしかしたら愛想笑い?でも、韓国人と中国人はよく愉快に笑ってくれます。笑うポイントが違うようですね。才能あるのかないのか。
文部大臣が聞いたら「即解雇、即逮捕」というかもしれません。でも、考えてみてください。僕に噛みついてくる文部大臣がいたら僕は噛み帰すと思います。「可愛い学生をいつまで温室の中の無菌室で育てようとしてる?」「温室の外は、バイキンだらけだぞ」「可愛いからと水を与えすぎると死ぬよ」「風にあたって、吹雪に当たりながら成長するんだよ」と。多分、無限に反論できます。教育現場で日々尽力なさっている先生がおおぜいいらっしゃるのは、もちろんよ〜〜く知っています。土日にも休まず黙々と部活だなんだと尽力なさる方をみると、驚異的な精神力と思います。は!!ここまでか!と感心しつつも憂慮の気分にも落ちいます。日本の先生が過酷な環境で頑張っていらっしゃるのを見ると実に頭が下がりますが、無菌室の話を聞かせてあげたいとも思ってしまます。
もしかしたら、今の日本の学校現場は「悪平等」に苦しまれてませんか?良い学生を守り切れることなく、みんな悪くするのが日本の教育現場の実状と僕は信じています。まさに、三方一両損の考え方が今でもあまりにも屈強と僕は思います。おとなしい、優しいウサギちゃんばかりでの映画が面白いはずがありません。虎、鷲がうさぎを狙うとその途端超面白くなるはずでしょうに。僕みたいな変人を大事にしてほしいと思いますけどね!韓国政府からいじめられてるから、日本が守ってほしい^^