Frederick R. Weisman Foundation(動画No. 41)
こんにちは、お菊です。いろいろ多忙で少し間が空いてしまいましたが、今回はロサンゼルスにあるFrederick R. Weisman Foundationをご紹介したいと思います。あまり日本語の情報ソースのない美術館なので、楽しんで頂けるよう頑張ります。
Frederick R. Weisman Foundationとは?
Frederick R. Weisman Foundationはあまり聞き慣れない言葉だと思いますが、ロサンゼルスにある芸術財団で、Living with Art-house museum(美術品と共に生きる)という文脈のもと、完全予約制でガイド付き見学をすることができる美術館を有しています。ビバリーヒルズのそば、Holmby Hillsという場所にあります。
予約の仕方
ホームページ(https://www.weismanfoundation.org/tours)にはメールアドレスが出ていますが、あまり機能していないように思います。なので頑張って電話して予約します。平日の10時30分〜と、13時30分〜の2回、枠があります。15分前ぐらいに到着するようにしましょう。早く着きすぎると時間を潰すところはあまりありませんが、マイケル・ジャクソンの邸宅が結構近くにあります。
行き方、入り方
交通公共機関はあまり頼れない場所にありますので、基本は車になります。UBERでも良さそうですが、高級住宅地過ぎて(?)あまり電波が届かないため帰りが少し困るかも知れません。ガイドさんも電波が届く人は運が良いというコメントがありましたので、できればレンタカーが良いと思います。現地でガイドさんとコンタクトできると門が開き、中に駐車させてもらえます。それまでは路上駐車で待機。縁石に色がついているところには停めないようにしましょう。詳細なアドレスは265 N Carolwood Drです。敷地が広く、入口が複数あり、電波がないためどこに行けばよいか混乱するかも知れませんが、とりあえずチャイムを鳴らすと対応はしてもらえます。サムネにさせて頂いた芸術的な郵便ポストがある入口は勝手口のようで、見学者用は南東側にある等身大ぐらいの銅像のある門が入口です。私がお邪魔したときは金曜午後のツアーでしたが8名程度の参加でしたので、他の人がいるだろう作戦は失敗するかも。
楽しみ方
通常の美術館と異なり、ガイドさんや周囲の人達とのコミュニケーションができるとより楽しめます(もちろんなくてもいいけど)。美術館にはイサム・ノグチの作品が複数あり、横尾忠則(後述)の作品もあることから、これらを抑えておくと良いでしょう。例えばイサム・ノグチ美術館に行ったことがある、というようなエピソードトークができると馴染みやすいでしょう。スピーキングの練習として、機能語は速く、内容語をゆっくり話す心がけもきっと歓迎されることでしょう。日本人は忘れがちだからね。
フレデリック・ワイズマンとは
1912年、ロシアの移民の子として生まれました。青果業からキャリアをスタートし、ハント・フーズに就職。創業家の娘と結婚し事業を引き継ぎました。その後車のディーラーを立ち上げ成功。中でもミッドアトランティックトヨタの成功が著しかったようです。1947年、モダンアートに関わることは人生の価値を高めることであるという価値観に出会い、コレクションを開始。名のあるオークションの最前列でよく見かける存在となった。1994年、膵臓がんで死去。享年82歳。
典型的なアメリカン・ドリームの体現者とも言われます。
再婚相手の奥様ビリーはご存命で、館長を勤めています。たまにメディアで美術館を紹介しています(後述)
卒業したミネソタ大学のそば、及びカルフォルニアのペパーダイン大学のそばに同氏の名前のついた美術館がそれぞれ存在しています
ノブレス・オブリージュ。逆に何もしないと座っているだけで金が入ると批判されるため、文化に対する仕事をするなどの貢献が求められます。アートコレクションは批判に対する反論にも使われているような印象もあります。
時代背景
この頃は、ハーバー・ボッシュ法の登場や鉄道の整備、機械の進化などにより農業が大規模化し、大幅なコストダウンによる不景気が起こった時代でした。このため宝物を切り売りする欧州貴族がたくさん出ました。これに目をつけた画商ジョセフ・デュヴィーンが「ヨーロッパには文化があり、アメリカには金がある」として大量にヨーロッパからアメリカに絵画を販売した時代でした。フレデリック・ワイズマン財団だけでなく、パサデナのノートン・サイモン美術館、同じくカリフォルニア州のハンティントン図書館、ニューヨークのフリック・コレクション、DCポートレートギャラリー、DCナショナル・ギャラリーなどの基礎になっている欧州絵画はこの時代に流れてきたものが多いようです。デュビーンはサザビーズの競売人、フィリップ・フックの「ならず者たちのギャラリー」でも描かれていますね。名画というのは、最初から名画であると決まっているわけでもないようです。
作品紹介
この財団は、建物の中は撮影禁止、外だけ撮影OKとなっています。このため写真でご紹介しづらいのですが、実は1986年に日本で展示会を行っており、その時のガイドブックが古本で手に入るのでその本を撮影して紹介します。ラフォーレ原宿、ナビオ美術館(現HEP)、そごう美術館(おそらく横浜)を回ったようです。
横尾忠則 Shadows (1984)
アーティストから直買いされたからか?キャプションがありません。帰ってからネット調べれば何か出てくるかな〜と思っていたら甘かった、ネット上にも情報はありません。アートの研究には大きな意味があることを感じさせられます。ヨコオはYokooと書くため、ヨクーと発音されており、韓国人かな?と思ってしまい、あまり注意深くガイドさんの解説を聞いていなかった・・・
ジャン=ミシェル・バスキア Exercise (1984)
かの有名なバスキアなのに、調べても画像すらまともにヒットしない・・・そういうもん?隠れすぎてない?怒られたら消します。
Dear concerned parties. Please contact me so I will remove the image which cited from the book if there is a problem. Thank you for your understanding.
アンディ・ウォーホル Frederick Weisman (1976)
ワイズマンとウォーホルはお知り合いだったそうで、個人的に作品を作りました。大量生産を皮肉る手法をパトロンに適用するということはさらに違う意味があるのでしょうか。この作品はホームページに載っているので安心してシェアできます(笑)
荒川修作 Moral/Volumes/Verbing/The/Unmind, 1976-78 (detail)
ネットにある荒川修作作品リストにも載ってなかったように思いますので、こちらも本から引用してみます。何かのヒントになれば。アナモルフォーズっぽくなっているでしょうか。
お庭
館内撮影不可でも、だいたいは公開されている
再婚相手の奥様は現在館長を務めており、メディア対応されているためだいたいは公開されています。下記の記事や動画も参考にしてみてください。この記事には、ニューヨークとロサンゼルスのアーティストの比較、アーティストとコレクターの信頼関係が述べられています。アートという無用の長物には、物質的なwin-winの関係は存在しないようです。ビリー曰く、重要なのは即興、直感、自発性、信頼関係であり、「流行」や「正しいこと」という理由でコレクションしないということです。無用の長物の中に価値を見出す人たちが率いる世界を垣間見ることができます。普段の生活では利害関係ばかりが人間関係を定義するように思い込んでしまいますが、一歩引いて考えると、利害関係がない彼らのような人間のつながりこそが、その本質に近いのかも知れないと考えさせられます。
おわりに
いかがだったでしょうか。このツアーはの出口はプライベートの車庫につながっているのですが、そこにあったトヨタの伝説的な車にも驚かされました。普通に乗ってるみたいだったし・・・。写真OKと言われましたが、美術品ではないと思うのでここでシェアすることはやめておきます。ぜひ現場に行ってみてくださいね。それでは次の記事でお会いしましょう。最後までお付き合いいただいてありがとうございました。