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漂流するこころ 7


孤独な船乗りは振り返らず
そのまま、双眼鏡に全神経を集中する
だが、その方向に島などあろうはずもない


あの文字、
あの吐息のような綴り

忘れることなどできない


どれほどの時が経ったのだろう
長い長い戦の末

己の存在すら嫌悪し
振りかえることを拒み
追い風を従え
自らを嵐に向かわせ
漂流という名のたったひとりのレースを続ける

それでも
夜が明け
朝がくる限り

愛とでもいうのか
小さな
赤い
バラが
こころに灯る

人の孤独を飲み干し
人の悲しみを噛み砕き
人の憂いを啜る日々

それでも

消せないものがある

わたしは人だ
愛しい人に会いたい

けれどわたしはひとであって人ではない

何度死んだことか

 
 そして

 その度に
 
 波間を漂う

 ガラス瓶のなかの

 こころを

 のんだ

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