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漂流するこころ 6


パウル・クレーだか

ボロノイ図に恋してから

彼の海を思う


あの海を往く船乗り


海を四角く切りとっては
塗り直し
コラージュしては
漕ぎ出して
魚を捕まえる

あなたの背中や
わたしの睫毛、
仔猫の耳へと

海はそのかたちを変え

流れ

たゆたい

水平線を探し続ける


あの孤独な船乗り

 また、出会ったな

 お前はたしか

 嵐の夜、難破した船に乗り合わせた女

 ちいさな古いガラス壜に助けられたのか

 ガラス壜の中の古い手紙と古い空気が

 お前を

 波間に浮かばせたというのか

 その古い手紙とやらを見せてくれ


それは

愛しい人へ宛てた

吐息のような文字で綴られた手紙だった



 ハナレテ

 イテモ

 ココロニ

 イキル



孤独な船乗りは

突然くるりと背中を向けた





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