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私は何者か、607



泣きたいときもあるだろう。その涙がジャージャー流れて、どこへゆくかは知らぬが、誰か、たったひとりでいいから、その胸で、泣いてみたことはあるか。ひどい顔だ。鼻水だって出る。悲しいのか、悔しいのか、抑えきれない感情を、それでも、涙が、形を変えて、その行く先を案じ、探す。そんな顔を見せても構わぬひとなど、そうそういやしない。ひととは、およそ、自尊心の塊であろうや。それがなくてはならないものでもあり、だから厄介である。痩せ我慢などと称することもある。しかし、その、痩せ我慢大会を誰かに自慢することで、癒やされるのである。ひととは、まこと、かまってちゃんなのである。

泣くことに慣れてはいけない。泣くことは、自然であるべきだ。普通に暮らしていて、なにか、きゅんとして、意味もわからず、涙がこぼれるのであるからして、それを泣くと。なんだ、目から、汗が出るんだとか。スポーツマンか。簡単に言ってはいけないが、自然と溢れることは、溢れるにまかせておけよ。

感情をコントロールできないのか、などと。んー、なになに、SDGsとか。やめてやめて。何がサスティナブルかしらん。

愛とか、そんなふうにいいながら、世の中は男と女。不思議なことにふたつに大きく分けられるのである。赤壁の戦いだって、知ってる、小喬の取り合いよ。なんだか、筋肉王もガックリね。世界はなんだって、戦いか。


戦いから目を背け、ただひたすらにすすむだけよ。目高のごとく、ゆくだけよ。水あるところに。我は、弱きもの。拙き者。危きものである。


我を、そっと、見て。


返すよ。


投げキッス。


投げよう、スキを。


あなたに。


わたしは何者か。




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