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私は何者か、595



彼が先に起き出して、微睡むわたしはそのあとみじかい夢をいくつか見る。

ドアを開けては、また、次のドアを開けては、開けては、開けてはの果てしないドア開けの夢。大小のまるい石がならぶ水辺のひときわ大きなまるい石の上で遠くを眺める夢。暗闇に続く階段をずーっと降りてゆくと、比叡山延暦寺に辿り着く夢。

まだ、ごろごろしていたいけど、起きようか。


お出汁の良い香り。
自家製味噌のお味噌汁。豆腐。油揚げ。大根。葱。じゃがいも。わかめ。具沢山よ。

彼の作るお味噌汁の美味しさ。


ゆるせる。


という、関係。


なにものにも、とらわれず、互いに縛らず、私たちは自由という、不自由ではない世界に暮らす。それほど、ハイではなく、かといって、ロウではなく、程よく、チユウヨウではないか。


毎日一緒ではなく、互いに仕事の日は互いの棲家を源とし、かといって、会いたいのであり、また、望むものである。

出会ってから四年も経つ。それにしても、未だこんなふうに思えるなんて。私としては、信じられない日々である。


夕餉には、友達との蟹食い行こ同窓会から帰ってきた彼のお土産ののどぐろと葱を頂こう。具沢山の粕汁もたっぷり作った。


冬が冬らしく、外は寒い。


人はひとを待つ。


ずっと、待っていた。



待つといふ尊さ冬の夜の更けて


わたしは何者か。



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