漂流するこころ 9
どれくらいの時間が過ぎたのだろう
虫の鳴き声が波のように寄せる
オフィーリアの持つ野花の束が流れに揺れる
展覧会の壁にある画家の作品のための習作のように、切り取られた一瞬が永遠に輝くために我らは生きる
足元をゆく流れに逆らうことなく、リボンを解くように日々を迎え、箱を閉じるように日々を送る
はじめまして
と
さようなら
を
繰り返し
日々の澱を静かに積み、眠りの中に解き放つ
珈琲の香りがする
オフィーリアの目は微かに開いて、涙はながれに解けていく
珈琲の香りがする
カーディガンをはおり、ドアを開ける
サンルームからの眩い光を背に纏い、彼が立っている
珈琲カップをふたつ、その手に持って
逆光のなかでも、その頬の影はギリシアの彫刻のようであり、その髪はしゅるりとくねっている
会いたかった
そのとき、目が覚めた