漂流するこころ 10
夢のなかで、叔母はほんとうに嬉しそうだ
恥ずかしがり屋で、そのくせ気の強い彼女は気づいてないフリなどしながら、そっと、傍の夫の指に触れてみる
木立を抜ける風が一瞬止まった
その運命の糸がピンと張り詰めて伸びる
この繋がりのために、どれほどの時間彷徨っただろう
いや、もう、いっそすべてわらい話にしてしまえばいい
終わった
叔母のこころの漂泊は雨雲のあらわれるように始まり、花火が消えるように終わった
珈琲を飲む
リンネルのテーブルクロスのシミが蝶のようにも、魚のようにも見える
わたしとて、流離う者
誰彼かまわず問い続け、木々にも水の流れにも問い、風にも、命にも問う
慣わしのように、
運命のように、
翅を限りに翻す蝶となり、
魚となり、その目を閉じぬまま
問う
彼は何処
わたしのこころは何処
ただ、会いたい
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