188.三題噺「女遊び、藪から棒、B級映画」
「好きです」
僕は人気のない場所で、先生にそう言った。
「そうか。わかった」
先生はひとつ頷く。
その時、ガタッと後ろで物音がした。
先生はその気配の主に心当たりがあるのか、「私はお邪魔のようだ」と耳打ちし、片手を上げて歩いて行ってしまった。
「誰ですか……?」
こっそりと出てきたのは先輩。
僕はヤバいと血の気がひく。
「き、聞いてました……?」
「こ、後輩くん、先生が好きなの……?」
先輩は質問を返してきた。
「え?」
藪から棒にどうしたんだろう。
「す、好きなの?」
「当然ですよ。尊敬してるし、直接は恥ずかしくて言えないですが好きな人ですよ」
恋愛の相談とか、協力とか、色々してもらってるし、あの人のことを嫌うわけがない。
もちろん異性としてではないけれど。
「でもでも、年上の異性なら他にもいるかもよ? 一つ年上の女子高生、とか……」
先輩はモニョモニョと何か言った。
「せ、せくしぃーでは無いけど、明るさとか、あとあと胸の大きさなら負けないし……」
休み時間、僕は先生に相談があることを話し、人気のない場所へと誘った。
そして「変わらず君は三人の女の子が好きなのか?」と聞かれたのだ。
当然僕の返答はYES。
不誠実かもしれないけど、これが正直な気持ちだったから濁さなかった。
先輩の反応を見るに、僕と先生の会話はハッキリと聞き取れなかったみたいだ。
でも、聞こえなかったにしては様子がおかしいな。
「先輩、大丈夫ですか?」
僕は先輩の頬にかかった髪を掬い、顔をよく見えるようにした。
先輩は何かに迷うように瞳を揺らしたものの、僕の手を優しくとって降ろした。
「ううん。ダメだよね……。後輩くん、私は女遊びする子に育てたつもりはありません! 先生と幸せになって!」
「え? 何言ってるんですか?」
「……え? でも、先生が好きって……」
「先生のことは人間として好きってことですよ。異性としてじゃないです」
「そうなの? でも、こんな人気のない場所で告白してたのに……」
「あ、あれは……。好きなB級映画とかの話ですよ。……はい」
「よ、よかったぁ〜……」
先輩はスカートが汚れるのも気にせず地面にペタンとへたり込んだ。
「せ、先輩?」
「早とちりしちゃっちゃたよ〜……!」
僕は何が何やら分からないまま、泣きついてくる先輩の頭を撫でて慰めた。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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