195.三題噺「つらい、置物、もち」
修学旅行最終日。
僕はお店に入り、商品を手に取った。
「お土産選んでるの?」
同クラさんの綺麗な顔が急に視界に飛び込んできて僕の体が驚きに跳ねる。
「ど、同クラさんはナル君にお土産?」
「うん。弟はお姉ちゃん離れできてないから、帰ったらかまってかまってされるんだろうなぁ……。あはは……」
力なく笑うも、その横顔はどこか嬉しそう。
僕も帰ったら妹を存分に甘やかしてあげようと思った。
「妹は何が嬉しいかなぁ」
僕は頭を悩ませる。
変なのを買ってドン引きされたらつらい。
こういうのは同性の同クラさんの方がわかったりするのかな。
同クラさんは妖怪か何かの置物を手に取り、右左と何度も翻しては眺めていた。
「同クラさん。えっと、相談があるんだけど……。今、大丈夫?」
「なになに?」
僕は妹のお土産を相談し、無事いいものを買うことができた。
駅に行くバスに乗ると同クラさんは僕の隣に座って、こくりこくりと船を漕いでいた。
それほど時間が経たないうちに、僕の肩に軽やかな重みがかかる。
もちもちのほっぺを突くと「むにゅ〜」とかわいい鳴き声と寝息が聞こえた。
「おやすみ。同クラさん」
そう声をかけ、気づいたら僕も眠っていた。
学校に帰ってきて、クラスメイトに話しかけられる。
ツーショット写真を撮られていたことを暴露され、僕と同クラさんはお願いという名の圧をかけて消させることに成功した。
なにやら同クラさんがスマホを触りながら交渉し、その結果に満面の笑みをしていたけど、何をお願いしたんだろうか。
「同クラさん、家まで送るよ」
「いいの? ありがとう」
二人で夕暮れの道を歩く。
体には幸せな疲労感。
「あの! 聞いてほしいの!」
同クラさんが僕の袖を引っ張る。
「なにかな?」
足をもじもじとさせてから、唇が開かれる。
「えとえとっ、その……。また明日っ!」
「……? うん。また明日」
同クラさんは恥ずかしそうに走って去っていった。
明日って修学旅行明けだから休みじゃなかったっけ?
何かあったかな……。
玄関を開けようとした時スマホが振動した。
「同クラさん……?」
文面は一言。伝えたいことってこれかな?
「す、きたや……?」
なんだろうこれ。誤字?
メッセージは数秒もしないうちに撤回されて、「ごめん。気にしないで」と送られてきた。
何かの誘いかと思ったけど、気のせいかな。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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