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191.三題噺「暇つぶし、文明、付き人」

 明日からの修学旅行に備えて忘れ物の確認をした後、することもなかったから暇つぶしを求めて僕は家を出た。

 家にいるのもソワソワするし、出かけることで気を紛らわしたかったのだ。

 休日のショッピングモールに一歩を足を踏み入れると喧騒。僕は文明に感謝をする。

「あれ? 先輩だ」

 そこには後輩ちゃんがいた。

「後輩ちゃんもひとり?」

「はい。もしかして、先輩もですか?」

「うん。明日から修学旅行だって思うと、落ち着くかなくってさ……」

 僕は、あははと渇いた笑いをした。

「私の付き人になってくれませんか?」

「付き人?」

「買い物に付き合って欲しいってことです」

 こうして僕は後輩ちゃんの買い物に付き合うことになった。

 後輩ちゃんの服装は大人可愛い。

 けど、胸元が緩くてデコルテに目が行ってしまうのが困るところだった。

 後輩ちゃんはご機嫌に足取りを弾ませている。それとは別に違う部分も弾んでいる。

 ふわりと洗髪剤か何かが香った。
 どうして女の子ってこんなにも魅力的なんだろうか。

 おそらく僕には一生解けない難問だろうな。
 そんなことを思った。

「明日から数日間、学校に行っても先輩はいないんですね……」

 洋服を見ている最中、手を止めて後輩ちゃんはしょんぼりと言った。

「寂しい?」

 揶揄ってみようと思って僕は冗談めかして言った。

「寂しくないわけがないじゃないですか」

「そっ、そっか」

 反撃を喰らった僕は何も言えなくなる。

「いない間の先輩成分をくれませんか?」

「ぐ、具体的には?」

 はい、と後輩ちゃんは頭を差し出す。
 これは、頭を撫でたらいいんだろうか。

 躊躇いはあったものの、僕は繊細なものを扱うように優しく、後輩ちゃんの頭を撫でた。

「えへへ、これで寂しくないです」

 よかった。要望に応えられたみたいだ。

「今日は私の買い物に付き合ってくれてありがとうございます」

 後輩ちゃんはお辞儀をした。

 視線の先には開いた胸元。谷間と水色。
 僕は生唾をのむ。

 胸元が緩いことを後輩ちゃんは気にしてないみたいだ。

「先輩?」

 返事がなかったことを変に思った後輩ちゃんは、屈んで僕の顔を覗いてきた。
 そのせいで余計に無防備になる。

 後輩ちゃん、ガードが緩すぎるよ。

「き、気にしないで。どうせ暇だったから」

 慌てふためく僕を、後輩ちゃんは不思議そうに見ていた。



作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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