186.三題噺「青信号、睡眠不足、ハンググライダー」
朝、登校すると同クラさんが席に座って船を漕いでいた。
「あ……。おはよ……」
僕に気づいた同クラさんは顔を上げた。
「隈が凄いけど、どうしたの?」
「今期アニメをね、追いかけようと思ったの……。そしたら最新話まで一気見しちゃって、気づいたら日が昇ってて……」
なるほど、睡眠不足か。
「起こしちゃってごめんね。朝のHRになったら起こすから寝ててもいいよ」
「う、うん。そうする……」
限界だったのか、同クラさんは腕を枕にして突っ伏した。
授業が始まってから、なんとか起きていた同クラさんだったけど、時折ハンググライダーで滑空するかのように夢の世界へと旅立っていくのが横目に見えた。
そして放課後。同クラさんはまだ寝ている。
「メガネかけたまま突っ伏すと危ないよ」
僕は同クラさんのメガネを外してあげた。
近くに置いておけば気がつくだろう。
みんなが帰宅する中、僕はコンビニに栄養ドリンクを買いに行った。
教室へ戻っても、時が止まったみたいに同クラさんは変わらず寝続けている。
教室には僕と同クラさんだけ。二人きりだ。
「同クラさん、起きて」
肩を叩くと、同クラさんは薄目を開けた。
「ん……んぅ……。メガネ、どこぉ?」
同クラさんは手を彷徨わせてメガネを探す。
そうして掴んだのは僕の右手。
「え、ちょっと……」
同クラさんは勘違いをしたまま僕の手を自分のほっぺに当てたり、指を絡ませたり、試行錯誤している。
「なんか、変な形のメガネ〜……」
まだ目がとろんとしているし、完全に覚醒はしていないようだ。
終いには頭に運んで撫でるように髪に滑らせはじめた。
髪の毛綺麗だなって思ってたけど、手触りも抜群だ……。
頭の中の天使と悪魔が僕に「我慢しなくてもいいのです」「今こそ青信号。進むべき時だ」と囁く。
どちらも悪魔だった。
って、違う違う。起きてもらわないと。
「ど、同クラさん。もういいかな?」
僕はどうにか左手のみで同クラさんにメガネをかけることに成功する。
ぱちっと大きな瞳が僕を捉えた。
それから自分の手を見て、開いたり閉じたり。
「ご、ごごごごごごごめんっ!」
事態に気づいた同クラさんは顔の前で手をジタバタとして謝罪した。
「う、ううん。気にしないでいいよ」
そのまま一緒に帰り、同クラさんが一気見したというアニメを教えてもらった。
寝不足には……なるんだろうな。
僕は徹夜を覚悟した。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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