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13.三題噺「幼年期、名を残す、えこひいき」

 僕は先輩の設立した意味不明な同好会で勝手に使用されている空き教室に来ていた。

 特に活動とかは無いから先輩と僕は使われていない机を挟んで座って喋っているだけだ。

「私、帰国子女になりたい」

「突然どうしたんですか?」

「帰国子女ってなんとなくネームバリューがあると思わないかい? 幼年期を海外で過ごしたって言ってみたい」

「いえ、まったく思わないです」

「後輩くん男子高校生なんだから、そういうかっこいいの好きかと思ったのに。ほら、ちゅ〜にびょう? みたいなやつ」

 厨二病の発音がやけに拙いけど、最近知った言葉を使いたいだけなんだろうな。

「私は、帰国子女で有名大学出身。一流企業に入社して異例の昇進を遂げるんだぁ。そして世界的有名人になって歴史に名を残すんだよ」

「妄想も大概にしてくださいよ。もしかしたら一流企業までは可能かもしれないですが、名の知れた偉人になるって……」

 呆れを通り越してもはや無だ。
 先輩らしいと思う余裕まである。

「……後輩くんは、どこの大学にするとか、もう決めてる?」

「そうですね、隣県の偏差値高めの大学で就職率も高いところです」

「わりと有名な大学だよね?」

「ええ……?」

 やけに詳しく確認するな。

 先輩は「もう少し頑張ろ……」と小さくつぶやいた。

 何を頑張るんだろう。

「なんにせよ、今の先輩の学力じゃあ偉人になるなんて夢のまた夢だと思いますよ。地道に勉強してください」

「こう見えても私、地域のクイズ大会じゃ負けなしだったのだよ!」

 胸を張って強調する先輩。
 その大きさに反して自慢するスケールがしょぼい。

「同世代の人っていたんですか?」

「まさか!」と先輩。

「おじいちゃんおばあちゃんだけだよ」

 ……だと思った。

「それって単にえこひいきされただけだと思いますよ」

「そんなことないもん!」

 先輩は小さなおててをブンブン振り回して怒った。
 けれど、心当たりがあったのかすぐ涙目になった。

「……ない、よねぇ?」

 段々確信を持てなくなって自信がなくなっていく先輩は、見るからに萎んでる。

「そんなこと、ない、よねぇ……?」

 僕に確認されても……。

 とりあえず思った。

 潤んだ瞳で僕を見る先輩は今日も可愛い。




作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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