190.三題噺「シャンパンタワー、気温、流しそうめん」
僕は先輩に誘われ、先輩の家の庭で流しそうめんをしていた。
「後輩くん、早くたべよーよ」
「はい……」
季節外れじゃないだろうか。室内でもいいんじゃないだろうか。と思ったものの、先輩がそういう気分だったんだろう。
お腹が空いていたこともあり、それほど時間をかけずに完食した。
陽が落ちるにつれ気温が低くなる。
寒さから先輩は小さく可愛らしいくしゃみをした。
「大丈夫ですか?」
僕はティッシュを渡した。先輩は鼻をかむ。
「体が冷えちゃった。家に入ろっか」
先輩は「うぅ、寒い」と唸りながら二の腕とか太ももを擦る。
「ぜひそうしましょう」
風邪をひいてはいけないし、僕も寒い。
急いで片付けを済ませて暖房が効いている室内に入り、先輩と一緒にソファに座ってテレビを眺める。
「そういえば、家族は何してるんですか?」
僕がお邪魔してから誰の姿も見えなかった。
「みんな出かけてるよ。だから、今この家には私と後輩くんだけ。ふたりっきりだよ」
「え……」
その言葉に僕は意識してしまう。
先輩も「あ」と今更気づいたようで俯いてだんまり。
なんとなくつけていたテレビが夕方のニュース番組へ変わったとき、先輩が唇を開いた。
「夫婦って、こんな感じなのかな……?」
そう言って僕に肩を寄せ、寄りかかる。
「夫婦……。先輩と夫婦……」
想像が膨らむ。
休みの日にこうしてゆっくり先輩と過ごせたらどれだけ幸せだろうか。
僕がちらっと視線だけ向けると、ばっちりと目があってしまった。
「あ、あはは。ごめんごめん。冗談だよ。困らせちゃったかな?」
先輩は恥ずかしそうに立ち上がり、「暑いね」と言って自分を手で仰いだ。
「ジュース、飲む?」
冷蔵庫から出したのは炭酸飲料。
「いただきます」
緊張で喉が渇いていたから助かった。
炭酸は苦手だけど今ならなんでも飲めそうだ。
「せっかくだし、おもしろくしちゃおうよ」
「面白くって?」
「ちょっと待っててね」
コップをいくつも持ってきた先輩はうまいこと積み重ねた。
そして天辺から流し込む。
それはまるで……。
「シャンパンタワーみたいでテンション上がるよね」
「まさに同じことを思ってました」
僕と先輩は揃って笑ったものの……まさか、全部飲み干すことになるとは思ってなかった。
先輩の方が先にギブアップしたせいで僕ばっかり飲むことになったし。ひどい。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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