193.三題噺「待ち合わせ、揺れる、百万年後」
「知らない天井だ」
朝日の眩しさで僕は目を覚ました。
ここは百万年後の世界だろうか、なんてボケてみる。
「ひゃっ!?」
目を声の方向に向けると、なぜか同クラさんのびっくりした顔がドアップ。
そうだった。昨日から修学旅行だ。
僕は時間を確認した。寝坊だった。
「やばっ!」
僕は慌てて体を起こす。
「っ……!?」
ゴチンッ、と僕と同クラさんの額がぶつかり、僕は悶絶した。
「ごめん! 私石頭だから痛かったよね?」
同クラさんは涙目になりながらも真っ先に僕を心配してくれる。頭なでなで付きで。
「よしよし。痛くないよ」
厚意を無下にするわけにもいかず、僕はじっと羞恥を耐えた。
そういえば、ここは男子部屋だ。
どうして同クラさんがいるのだろう。
そう思っていたら状況を説明してくれた。
「みんな出発してて、同クラさんだけ寝坊した僕のために残ってくれたってこと?」
「うん。そうだよ」
クラスメイトも先生も僕を放置しているようだ。
いくら今日が自由行動の日だからって、みんな自由すぎやしないだろうか。
僕、一応生徒会長だよね……?
「みんなと別行動になっちゃってごめんね」
「気にしないで……! むしろ嬉しいから。よかったら……一緒に観光しよ?」
気を使わせちゃって、申し訳ない。
「うん。お願いします」
それから準備を済ませたものの……。
待ち合わせを約束した同クラさんの姿が消えた。
スマホを見ると『ロビーで待ってるね』と連絡が入っている。
だけど旅館のロビーに同クラさんの姿は無く、代わりにスマホが置きっぱになっていた。
僕は焦る。
事件に巻き込まれた?
僕が遅かったばかりに……!
間に合えっ……!
旅館を駆け出て、すぐそこに同クラさんはしゃがんでいた。
気合いは空振りに終わった。
「同クラさんっ!」
姿を見つけて安堵した僕の大声が響く。
同クラさんは散歩をしていた飼い犬と戯れていたようだ。
僕は大声を出したせいで犬に威嚇された。
びっくりした同クラさんの瞳が揺れる。
それは僕を映した。
「憧れのシチュエーションみたい……。知らない土地で迷子になって、それを王子様が助けてくれるの。そんな物語の話……」
「……夢を叶えられたのなら光栄だけど、はぐれたら大変だから気をつけてね」
「ご、ごめんなさい」
その後、同クラさんと観光した。
一緒に旅館に帰るとデートだと揶揄われ、言い訳をするのが大変だった。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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