14.三題噺「生徒手帳、おかず、血」
授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り、ようやく昼休みだ。
「購買行くか……」
隣の席の同クラさんは友達と談笑していた。
「後輩くんっ」
伸びをして体をほぐした後、立ち上がると、教室の外から僕を呼ぶ声がした。
そこには可愛らしい笑顔をした先輩がいた。
少し大きめのランチバッグを手に下げている。
「お昼に来るなんて珍しいですね。何か用事ですか?」
「ちょっと来て」
「?」
言われるがまま先輩について行き、辿り着いたのは使われていない空き教室だった。
座ると同時に弁当箱が手渡された。
「えっ……と、これって?」
「作ってきたの。食べて?」
先輩の左手の人差し指には絆創膏が巻かれていて少しだけ血が滲んでいた。
僕のために頑張ってくれたのかな。
先輩からの手作りお弁当ということもあって、嬉しくなった心が弾んだ。
「ありがとうございます。いただきますね」
味や見た目がどうであろうと気持ちだけで、もう美味しい。
蓋を開けると、定番のおかずでありテンションの上がる唐揚げ。
そしてポテトサラダときんぴらごぼうと卵焼き。
プチトマトと絹さやも乗っていて彩り抜群だ。
……あれ? 見た感じすごくおいしそう。
もしかして調味料を間違えた系か? と思って僕は卵焼きを頬張った。
しっとりふわふわで、かなり美味しかった。
味付けも少し甘めで僕好みだ。
「おいしい……」
「ほんと!? よかったあ」
先輩が手を合わせて喜んだ。
「申し訳ないですけど、指、怪我してるみたいだから失敗したのかと思ってました」
「え? あはは。これは違うよ。さっき生徒手帳捲ってたら指切っちゃっただけ」
「なんだ。それならよかった」
先輩が僕の顔を見て、ビクッとして急に頬を赤らめた。
「どうしたんですか?」
「……なんか、今日、後輩くん、すごい優しいから照れる」
「だって、本当に心配したんですから! 無理させたなら悪いなとも思ったんですよ」
僕はありのままの気持ちを先輩に伝える。
「先輩のことが大切ですから」
「……え? それって」
「……あ」
僕はつい勢いに任せてものすごいことを言ってしまったのではないだろうか。
顔が熱い。先輩を見れない。
誤魔化すように僕は唐揚げを食べた。
恥ずかしさで頭が埋め尽くされていても、唐揚げは美味しかった。
作者です。
三題噺を書きました。
題目の選定は以下のサイトを使用させていただきました。
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