文化人類学のキモ意味形態論―自己啓発、組織運営に効く文化人類学入門#5
第3章 意味・形態論
さて、文化のキモの部分に話しを進めて行きます。意味・形態論です。
文化核と流動区域
その前に、文化の構造を見ておきます。文化は、
文化核(core culture)と流動区域(fluid zone)
の二重構造になっています。
文化核は変化を拒否しますが、流動区域は変化を受け入れます。
それぞれの文化によって、この文化核と流動区域の大きさは異なります。会社も学校も組織も家庭もみなそうです。
次の図をご覧ください。
現代文化はタイプAで、文化核の部分が小さくなり、流動化した部分、すなわち多様性が大きくなります。
他方、部族の文化などはタイプBで、文化核が大きく流動区域が小さくなります。多様性があまりない文化です。
日本の文化はどうでしょうか。あなたが属しているコミュニティーはどうでしょうか。
会社をイメージしてみてください。
タイプAの会社は、中心の理念はハッキリしていながら、運営や考え方や社員の個性については多様性を認める組織です。
他方、タイプBの会社は、多様性がほとんど認められず、社員が同じ動きをする組織です。
社風や企業理念で、組織の作り方は変わってきます。
しかし、現代の風潮として、タイプAの組織は歓迎されます。古いものに縛られにくい、新しい発想の事業を展開しやすくなります。
タイプBは固定化しやすくなります。
ヒント 組織の流動区域がどれくらいかを見る。
文化核を確かめる
その組織の文化核が何かを再確認することも大切です。
会社であれば、揺るがしてはならない企業理念みたいなものです。学校でいえば、建学の精神みたいなものです。
あなたの属している組織は、文化核はどういったものでしょうか。
世界観
もう一点、意味・形態論にお話しを進める前に、世界観(worldview)について触れます。
文化人類学に世界観という考え方があります。文化核のさらに中心にある核みたいなものです。
簡単に言うと、
「自分が生きている世界はどのように組み立てられているかという、深いところにある概念で、多くの場合、構成するメンバーも意識していない、それにもかかわらず、一定の影響力をもっているもの」
です。宇宙や世界をどのようにイメージしているかということです。
世界観は、文化によってかなり違います。
大陸の中心でしか生活したことがない、海を見たことがない部族であれば、どこまでも限りなく横に広がっているような、変化を好まない世界観を描くでしょう。
他方、小さな島に暮らしている部族であれば、水に覆われた、ときには洪水が来るかもしれないという、やや不安な世界観を描くでしょう。
世界観の大切なところは、世界観が多くの場合、無意識であるにもかかわらず、行動に影響しているということです。
あなたは、どのような世界観を持っていますか。
意味・形態論
文化核と流動区域、世界観のお話しをしました。
このように、文化を二重構造でとらえる考え方を「意味・形態論」といいます。
ここでいう「形態」とは、
道具、家、服装、車など、
見えるものです。
概念、結婚、家族、言葉、文法、歌、踊りなど
もここに含まれます。
他方、「意味」とは、
その形態の背後にあって、それを機能させているもの、あるいはその形態を行う意味付けになるもの
を指します。
形態には必ず意味があります。意味のない形態は存在しません。
たとえば、座るという行為(形態)には、疲れを癒したいという動機(意味)が存在します。
意味はその文化の中で決まる
意味は、その文化の中でどのように機能しているかによって決まります。
同じ形態でも、他の文化では違った意味になりますし、そもそもその形態とマッチングする意味が存在しない場合もあります。
ですから、どの形態もその文化の中で評価する必要があります。
意味・形態論は文化人類学のキモです。
続く ―次回は、意味・形態論の詳細を書きます。
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