海洋ゴミ調査隊 in 隠岐(2023年海洋シンポジウム 子どもプログラム)①
「世界の大きな問題を小さく地域から考える。」をテーマに、令和5年3月10日(金)-12日(日)にかけて国際海洋ゴミシンポジウムが島根県・隠岐諸島で開かれました。そして大人向けシンポジウムの開催に伴い、環境教育の一環として子ども向けのプログラムも開かれました。概要については以下の通りです。大人向けのプログラムについては、こちらからご覧ください!
【実施日】令和5年3月11日(土)~12日(日)
【開催場所】隠岐の島町・海士町
【対象】小学5年生~中学2年生
今回の参加者は隠岐4町村から集まった小中学生15人と、グループまとめ役となる島前高校生のボランティア3人も参加してくれました。
【主催:日本ジオパークネットワーク、隠岐ジオパーク推進機構】【協力:隠岐しぜんむら・隠岐ジオパークツアーデスク】
~幅広い年齢層から集まる隠岐諸島の子どもたちが「海洋ゴミ」をテーマに地球全体の問題を隠岐から考える。また環境教育の一環として環境保全に関する学習と体験を行う。~
目的①五感であそぶ
隠岐の豊かな自然をフィールドに「なぜだろう?」に溢れた時間を。自分で触れて、感じながら海を、生き物を学ぶことを大切にします。
目的②海の未来を考える
楽しんで遊んだ海で今起こっていることはなんだろう?
自分で考えて発見したことと普段の生活の繋がりから海の未来を考えていきます。
目的③世界の海をシェア
知って、考えた後は「私の地域の海はこんな海」を世界に発信する。海洋ゴミをキーワードに世界の海の今を知ろう。
Day1- 3月11日(土)
8:45 隠岐ジオゲートウェイ1F
島前(西ノ島町、海士町、知夫村)の参加者は菱浦港で集合した後、高速船レインボージェットで西郷港に向かいました。島後(隠岐の島町)の参加者とは西郷港にある隠岐ジオゲートウェイで合流し、1泊2日のプログラムが始まりました。
プログラム1:お互いを知って、一緒にSDGsについて考えてみよう。
9:00-9:15 オリエンテーション・自己紹介
今回集まってくれた参加者は、環境問題や隠岐の海洋ゴミについて学び関心のある子どもたち。調査や実験の時間では6、7人の固定グループで活動します。3グループそれぞれが「はじめまして」の挨拶から始まり、「なぜこのプログラムに参加したのか」を順番に話していきました。
9:15-9:30 グループトーク「隠岐の魅力はなんだろう?」
「地元・隠岐」に感じる魅力を改めて考える時間です。「食べ物が美味しい!隠岐牛も、海鮮系もある!」「人が優しい」「自然がいっぱいある」「地区のお祭りが楽しい!」などなど様々な意見があがります。その中で進行を務めていた隠岐しぜんむらの若柳 愛(わかやなぎ あい)さんが注目したのは「海がキレイ!」という発言でした。
「遠くからみればキレイに見えるけど、近くでみたら本当にそうかな?」と問いかけます。確かにゴミが結構あるかも・・と少し自信なさげな子どもたち。そこで若柳さんは、隠岐が深刻な海洋ゴミ問題を抱える地域であり、また海洋ゴミ問題は地球規模であることを伝えます。
9:30-10:00 持続可能な開発目標(SDGs)って?
SDGsとはSustinable Development Goalsの略。「誰ひとり取り残さない世界の実現」をスローガンに2016年から2030年の間で達成するために掲げた目標であり、2015年9月に国連総会で採択されました。ユネスコは国際連合の教育科学文化機構であり、ジオパーク活動はユネスコの正式プログラムです。ジオパーク活動を通してSDGs達成へ貢献していくことは隠岐ジオパーク推進機構が目指していることでもあり、海洋ゴミを考える中でも不可欠なアジェンダでもあります。
・SDGs14「海の豊かさを守ろう」海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する。
しかし「海洋資源の保全」の問題もただ海の活動だけをやっていれば解決するわけではありません。そこで他のどんな課題と関連しているのか、子どもたちはSDGsカードとにらめっこしながら考えていきます。
一つの事象に隠れている背景を考え、広く視野を持つことを学んだ子どもたち。次はいよいよフィールドに出て海洋ゴミ調査隊としての活動を始めます!
プログラム2:東郷川をトレッキング!調査を始めよう。
西郷港からバスで10分ほど揺られると東郷川の上流につきます。今回は上流から河口に歩いて下りながらマイクロプラスチックのゴミ調査を行います。
①川付近を歩いてゴミの状態をチェックする。
注意深く周りを見渡しながら歩いていると、たばこ・空き缶などポイ捨てされたと思われるゴミを次々に見つけました。また人があまり住んでいない上流より、民家がある中流・下流に下るごとにゴミの量は増加していることも判明。「人がわざと捨てているんだ!」「隠して捨ててるみたい」など比較することで子どもたちも新たな発見があったようでした。
②川に入ってCOD測定と生きもの観察を行う。
今回は上流・中流・下流の3つのチェックポイントを設け、それぞれで調査を行うことで川のよごれとゴミ問題の関連性を学びます。子どもたちは長靴と長い手袋をつけてやる気十分!
チェックポイント1上流
COD測定:5
見つけた生きもの:ヤゴの幼虫、アブの幼虫、カワゲラの幼虫など
チェックポイント2 中流
COD測定:5
見つけた生きもの:サカマキガイ、ヘビトンボ、シラウオなど
チェックポイント3:下流
COD測定:5
見つけた生きもの:アブの幼虫、カワゲラの幼虫など
見つけた生きものの中にはキレイな水にしか生息しない生物もおり、ここからも隠岐の水質はレベルが高いことがわかります。しかし一方でプラスチックゴミやガラス片など人工物も採取しました。生きものが暮らしやすい環境をゴミが妨げる可能性があることも同時に学びました。
12:00-13:00 東郷公民館にて昼食
プログラム3:隠岐水産高校とのコラボ企画。漂流ゴミを探しに船に乗る。
隠岐水産高校は隠岐の島町・西郷湾に面し、水産・海洋教育に力を入れる水産系の高校です。午前中の水質調査で調べた東郷川の河口も西郷湾へと流れていきます。川から流れ出た漂流ゴミは海にどのような影響を及ぼすのか、隠岐水産高校の船に乗船し調査開始です。
今回は隠岐水産高校の先生、隠岐在住の島根大学生物資源科学部 附属生物資源教育研究センター 助教授 小野 廣記(おの ひろき)先生にも同行していただきました。コースは 西郷湾~湾外~海上保安庁前~西郷港 という順番です。
通常は海水中に漂う浮遊生物(プランクトン)を採集するために使用されるプランクトンネットを用いて、海水の上澄みを取っていきます。ここで採取したゴミはプログラム4「島根大・小野先生と海洋ゴミが生物に与える影響について考える」にて観察します。隠岐に住んでいてもなかなか行く機会の少ない海上に出て、調査したことは子どもたちにとっても良い経験になったようでした。
ご協力いただいた隠岐水産高校の皆さんにこの場を借りて、感謝申し上げます!ありがとうございました。
14:30-15:15 隠岐自然館(隠岐ジオゲートウェイ2F)を訪れ、解説を聞く。
プログラム4:島根大・小野先生と海洋ゴミが生物に与える影響を考える。
・採集した漂流ゴミを顕微鏡で観察
隠岐は日本海に面する地域でも特にゴミが多い地域であり、1㎡あたり3.7コのマイクロプラスチックがあるといわれています。この高いマイクロプラスチックの濃度のうち、約8割が陸上ゴミから生成されたマイクロプラスチック。実際に顕微鏡の観察でもテープの破片や発泡スチロールなどの陸上ゴミが発見されました。
・講義「漂流ゴミが生物に与える影響について」
そもそもマイクロプラスチックとはなんでしょうか。一般的には直径5mm以下の微細なプラスチックのことを指し、自然分解が極めてされにくいため一度海に放出されると何百年という単位で海を漂うといわれています。
小野先生の講義のあと、深谷さんから「一番プラスチックゴミとして種類が多いのはなんだと思う?」という質問がありました。答えはNo.1が人工芝のかけら、No.2がコーティング肥料の被膜殻とのことでした。意外な製品にもプラスチックは使用されており、人間はその煩雑さを管理しきれていないのではないでしょうか。それでも我々には「作る責任」と「使う責任」がある。一度分解されれば把握することさえ難しいマイクロプラスチックだからこそ、生物や人間の身体への影響を防ぐためにより真剣に考えていく必要があることを学ぶ講義でした。
18:45-19:45 レストラン凪にて夕食
19:30-20:30 レクリエーション・1日目の振り返り(あいらんどパーク ログハウス)
21:00 入浴・就寝準備
~1日目終了~
ここまでご覧いただきありがとうございました!
2日目については海洋ゴミ調査隊 in 隠岐(2023年海洋シンポジウム 子どもプログラム)②
でご紹介していますのでそちらもお楽しみください!