作業所から就労へ
〇仕事を選んだ理由
祖母の介護が始まったタイミングで介護の仕事の話がきたことがきっ かけのように思います。やりたいと自分で言っていたので声がかかった のかなと思います。社内にソーシャルワーカーがいて相談ができることが魅力と感じました。
面接を行い、週4日×4週の実習を終え、すぐ就職。ソーシャルワーカーから間を空けない方がいいと言われました。今の職場の前にも1ヵ所特別養護老人 ホームに委託訓練に行っています。
こちらから発信して助けを求める時はメールして相談に乗っても らったことがあります。 就労支援センターから月1回職場訪問があります。 就職時からずっと施設長と週1回面接してもらっています。気分や体調を聞いてもらいます。利用者さんのことで何かあった時もそこで報 告しています。
最初のうちは、作業所で作業が出来ていれば誰でもできるかな、という仕事でした。今はだんだん職員間の人間関係や利用者の方とのやりとりな ど、古株になってきたことで任されてしまうことで大変にはなってきました。
〇仕事をしてみて気付いたこと
仕事内容は、環境整備をしながらの傾聴(見守り)と利用者さんのお 茶出し配膳などです。出せばいいというものではなく、丁寧さも求められるなと思います。
レクリエーションも一緒に入ります。料理プログラムやビデオを見な がらの体操、クラフト作成などの手を動かして何かを作るなどを行いま す。
仕事をするのにコミュニケーションは大切です。作業所に来ている人は能力が高いと感じました。でも、全体で仕事をする時にはまた少し違うと 思います。コミュニケーションが必要です。
仕事をしていて、思うようにいかないことはあります。みんなそれぞ れの意見を言うのでどこで折り合うのかな、と。あれ?と思うことがあ ります。本当にそれ利用さんは喜んでいるのかな、と。みんなが悩むの もそういうところじゃないかなと思います。仕事の上では意見の違いで ぶつかり合うこともあります。そういう時に自分の気持ちをどう整理するかだと思います。自分は、その場ではあまり言うことは多くないけれ ど、施設長に相談したり他の人に意見を聞いてみたりして相談先を作っておきます。全員と意見が合うことはないし、それでいいのかな、と思 うようになりました。
差別的、理不尽と思う時はソーシャルワーカーに相談します。「うつ病の人って家に 帰ると死にたくなるの?」と面と向かって聞かれたことがあります。そ んな風に思われているのか、とショックを受けたけれど、真に受けなく ていいのかなと思うようになりました。自分も卑屈に人を見ていたこと もありましたし。
ソーシャルワーカーやまわりの友人にそういうことを話せるようになりました。どこに何を相談したら良いかは意識しています。全部、人との信頼関係の延 長だと思います。
過去上手くいかなかったことを思い返してみると、「全部相手が悪い」も「全部自分が悪い」もないです。うまくいかないときにどっちかのせいにしてしまうのが、この病気のクセみたいなところはあるけれど、社会で成長したところはあると思います。気分調べで自分の状態を発信できる、というのはまず第1歩だったかな と思います。
人間関係について、「みんな仲良く」は必要ないと思います。みんな 違うからです。それを全て輪にしようというのは怖いことだなあと。距 離を取りたいというふうにしている人には無理に寄っていく必要はない と思います。そっとしておくことにしています。また、距離を縮めすぎ て失敗したこともあります。仕事が終わっても話が終わらなくて帰れな かったことがあります。うまくかわす、自分を守ることができないと始まりません。
仕事をするうちに、自分は世話好き、人の面倒を見ることが苦ではな いことに気が付きました。祖母の相手をするような感じで、家でやって いたこととあまり変わらずできます。向き不向きで言うなら向いている のかな、と思います。
〇病気でつらかった時
作業所にいるときは先のイメージを持てませんでした。入院もしましたし、自分のアイデンティティが崩壊していたように思います。なんと か生きていけるかどうか、自分は空っぽという感じだった中で作業が 始まり、とにかく時間だから行かなきゃ、という感じでした。 つらいときは周りも寄ってきません。自分は元気、と発信するよ うになるとまた連絡が来ます。今年は、同窓会の日程を友が自分に 合わせてくれたり・・・声をかけられることも多くなりました。
今は、「今日食べて、寝られればよし」と思うようになりました。
〇薬との付き合い方
作業所の内職が副作用からくる手の震えでうまく行かなかったことがあ ります。デポ剤 (注射) を受けるようになってからその副作用が始ま りました。作業所にいたときにはもう注射はしていなかったけれど副作用が 残っていました。薬で今より20kgくらい体重があった時期もありま す。特にダイエットはしていなかったけれど、作業所で動くようになって 少しずつ痩せていきました。今も少しありますが、薬で落ち着いてい ます。 話している時はあまり出ないけれど、ふと した時に首が傾いたり手が動いたりすることはあります。
今は眠剤2錠で眠れています。もう少し減らしてもいいと言われてい るけれど、以前減らして眠れなくなったことがあるので慎重にお願いし ています。主治医は会うたび笑っています。「あなたは元気でいること が啓蒙活動だよ」と言われます。
〇仕事の中で変わったこと、やりがい
仕事の中で成長できたこともあったし、自分らしさがでてきました。具合が悪かったときも長かったので、その時の自分と比べると友にも 「変わったね」と言われます。
利用者さんは自分の心を映すな、と思います。今は自分の状態が良い せいか、お話しして下さることが愛しくて仕方ないです。利用者さんの 背景やそこに至る道のりに寄り添えるのが嬉しいです。傾聴を心がけて いるので、家族にぽろっと話すようなことを話してくれます。自分が休 みの日には「利用者さんがあなたを探していたよ」と言われたりもし ます。
嫌なこともあったけど、やっぱり「人っていいな」と思える。そういうところがうれしいです。
〇作業所でとりくんだこと
報連相と人の話を聞くことは作業所で取り組んだことだと思います。
〇今の生活
就職して半年くらいたった頃、家を出たいなと考えて一人暮らしを 始めました。病院、実家からある程度近いところ。以前から考えては いたけれど、体力面で自信がありませんでした。作業所に通っていた時は、 帰ってきたら横にならないといられなかったので1人暮らしになって食 事作りまでやれると思えませんでした。一番心配だったけれど今と なっては食事作りが一番楽しいです。
前職は栄養士だったので、もともと好きだったというのもあります。自分 のために好きに作っていい、というのがすごく楽しいです。かといっ て毎日は出来ないので、1週間作り置いたりエ夫しています。実はSNS で作ったものをアップしています。それでまた繋がりが広がったりという楽しさもあります。無理したら続かないので、肉と野菜を炒める 程度の無理ないメニューです。
1人暮らしの大変さは「朝起きること」です。最近特に寒いのがつら いです。仕事に慣れてくると、以前はすごく早い時間の電車に乗って いたけれどだんだん遅くなってきました。遅刻はしていないけれど、 朝寝坊の心配はあります。もともと昔から遅刻タイプです。作業所では頑張っていました。
〇今の夢・希望
経験したことが誰かの役に立てるなら本望です。
パッチワークで敷物を作りたいです。人生かけて作っていけるような ものがあると良いなと思います。まずは来夏までに自分がくつろげる ラグをと考えています。
好きなこと、やりたいことは今やれています。今が楽しい。これを長く 続けていきたいです。
〇今、作業所にいる皆さんに伝えたい事
思うようにいかないことは多いです。過去の自分にも伝えてあげたい です。それを「自分のせい」と罪悪感に思ったけれど今は「そのままで いいよ」と言ってあげたいです。思うようにいかないのは当たり前、何 かのせいじゃない。 何歳になっても何かを始めるのに遅いということはないです。その意味 がようやくわかるようになりました。始めるタイミングが人によって違うだけです。親と自分を比べる必要もないです。「親が〇〇歳のときに はこうだったのに・・・」と目標は母親でそれ以外はダメと思っていた けれど、距離が離れると見える世界は違うと思います。