「存在しない四字熟語辞典」について
この度、#COMITA137にて『存在しない四字熟語』を販売いたします。一円玉がたった二百個の価格なので、興味が湧いた方はお越しください(ただし当日、一円玉二百枚を私に投げつけるのはおやめください。日本政府発行の百円玉二枚でお求めください)。
コミティア137 9/20 11時〜15時
東京ビッグサイト青海展示棟A•Bホール
サークル名 桶村模型
スペースNo.「お04b」 ジャンル:N
存在しない四字熟語辞典 ¥200
以下に試し読みとして、「玩具握杯」という四字熟語の解説を載せております。
玩具握杯(がんぐあくはい)
大抵の居酒屋では、ビールがジョッキで提供される。バケツや茶碗で提供されることはまずない。
居酒屋で人間観察をすると、ビールジョッキの取っ手を持たずに側面を持って飲んでいる人がいる。若干みっともない気がするが、ジョッキの持ち方なんて正直どうでもいいと思う人が大半だろう。しかし、それは間違いだ。大半ではなく全員がどうでもいいと思っている。
予言書に記されているワケでもないのに、どうして側面を持つ一族が生まれてくるのか。持ちやすい取っ手を持たずにわざわざジョッキ本体を持っている理由について、以下に考えられる原因を考察する。
①手を冷やしたい
冷たいビールを注いだジョッキはひんやりとしている。一方取っ手の方は大して冷たくない。これはジョッキの物理学的構造に起因すると思われる。季節は熱い夏。少しでも身体を冷やしたいという願望が横溢する。そこで、取っ手を持たずにジョッキを持つことで、手っ取り早く身体温度を下げようとしているのだ。つまり、熱エネルギー的観点からの挙措だという説である。
②取っ手という概念がない
生まれてこの方、取っ手のないグラスでしか液体を飲んだことがない。そのため、ビールジョッキを見る度に「なんかU字型の物体がグラスの側面についているけど、これは一体なんだろう?」と疑問符を浮かべながらジョッキを握っている。いつしか、「そうか、この部分を握るとグラスが持ちやすい。よく見たら周りの人達はみんなそうしている!」と歴史的大発見をする可能性がある。つまり、将来有望である。
③レゴ人形に精神を乗っ取られている
ジョッキを直に握っている状態の手の形は、レゴの人形(フィグと呼ばれる)の手とそっくりの状態である。デンマーク製玩具に憑依された彼らは、自分の手のサイズにフィットする円柱状の物体しか持てない。つまり、ビールのジョッキは、彼らが保有し続けられる数少ないアイテムというワケだ。
このジョッキの持ち方をレゴ人形にちなんで「玩具握杯」と呼ぶことにしよう。ただし、これではあまりにも意味する範囲が狭すぎるため、転じさせて他のものも指すことにする(転じるという動詞は他動詞ではなく自動詞だという英語教師みたいな指摘をしてはならない)。
そこで、道具の使い方がまるでわかっていないが、対して害はない状態一般を指す言葉として玩具握杯を定義しよう。